2019年1月30日の外国為替市場
FOMCでフェデラルファンド金利の誘導目標を2.25ー2.50%レンジで据え置くことが決定され、米ドルは30日、大幅に下落した。FRBは「いくらかのさらなる段階的な」利上げが適切との文言をFOMC声明から削除し、忍耐強く対応していく姿勢を公式に発表した。ユーロ/米ドルは1.15へ上昇し、米ドル/円は109を割り込んだ。アジアやヨーロッパのマーケットで今回のFOMC声明が織り込まれていくにつれて、ドルはさらに下落するだろう。12月に利上げを実施したばかりのFRBにとって、これは大きな変化である。FOMC声明によると、世界経済と金融の動向、落ち着いたインフレ圧力を考慮し、どのようなFF金利の目標誘導レンジの将来的な調整が適切か考慮し、委員会は忍耐強く対応するとしている。また、前回のFOMC声明にあった、経済見通しへのリスクは「概ね均衡していると判断する」との文言は削除された。 パウエルFRB議長は記者会見で、米経済は好調であるとしたが、利上げを実施する論拠は後退したと表明。また、パウエル議長はマーケットの混乱を回避するために、バランスシートの縮小は利上げ後に実施される可能性が高いことを述べた。結局のところ、マーケットは今年の利上げを想定しておらず、今回のパウエル議長の記者会見によりその可能性は高まった。次回のドットプロットでは、マーケットの予想を反映して下方修正されるかもしれない。
一方、通商協議は平行線である。ドナルド・トランプ米大統領は中国と合意に至るよう圧力を受けているが、ファーウェイ起訴の一件もあり、どの程度トランプ大統領が本気かはわからない。3月1日の期限までに、米中両国はさらに1、2回の通商会議を開く予定である。
他方、カナダドルと豪ドルは主要通貨の中で最も上昇していた。米国によるベネズエラ産原油への輸出制裁により、原油価格は2ヶ月ぶりの高値を記録した。原油在庫量は予想を下回って上昇する一方で、ガソリン在庫は減少した。原油価格は短期的な底値を記録したが、米中通商協議が失敗に終わった場合、さらに下落するだろう。米ドル/カナダドルは1.32を下回り、2019年の底値から8pipsの範囲内にある。11月のカナダGDP成長率は31日に公表される見込みである。成長率が鈍化している場合、カナダドルの上昇は終息すると考えられる。豪ドルは好調なインフレ指標を背景に上昇している。豪消費者物価指数(CPI)は前年比では鈍化しているが、前四半期比0.5%の上昇し、予想を上回っていた。。オーストラリア中央銀行(RBA)は今後利上げを実施する可能性が高いと述べており、今回の好調なインフレ指標によりその可能性はさらに高まった。
ユーロ圏の消費者信頼感指数が低下したことは、マーケットの低迷や経済成長率の鈍化を考慮すると当然の結果である。1月の独 消費者物価指数(CPI)は前月比0.8%の減少であり、前年比では昨年2月ぶりの最低水準である1.4%であった。米ドル安以外にユーロ高になる要因は考えられない。テクニカル分析の観点では、ユーロ/米ドルは1.145を突破し1.1550への回復が見込まれるが、31日発表の独失業率やユーロ圏の第4四半期 GDPはユーロ高に寄与しないだろう。
米ドル安を背景にポンドは高値で取引されている。しかし、ブレグジットを前に、ポンドは他の主要通貨に対しては下落している。英国EU離脱までに60日を切って、テリーザ・メイ英首相はアイルランドのバックストップ代替案を2週間で作成しなくてはならない。メイ首相は議会に対して、修正案を納得できる形で用意できなければ、2月13日にブレグジット協定案を修正する機会があることを約束した。議会はメイ首相に、EUとの協議を再開してアイルランド国境のバックストップ条件を変更することを望んでいる。しかし、EUやアイルランドなどは公式に再交渉を否定しており、メイ首相はブレグジット協定の修正案を議会で可決させなくてはならない。いずれにせよ、今後2週間はポンドにとっては不透明なものになるだろう。我々はポンドには下振れのリスクがあると考えている。