第1四半期は米ドルにとって厳しい時期だった。年初の104.78までの大きな下落の後、 ドル / 円は安定した回復を見せ、最高値112.13まで上昇した。
ドルはユーロに対して数ヶ月ぶりのドル高となったが、英ポンド、オーストラリアドル、ニュージーランドドル、カナダドルに対してはドル安となった。この3か月間には様々なことがあった。世界的に経済成長は鈍化し、債券利回りは急落し、中央銀行は利上げを止め景気刺激策の必要性について話している。米国では逆イールドが発生して景気後退への懸念を引き起こし、欧州ではブレグジットの結末を見守っている状態だ。これらの懸念は第2四半期を通じて金融市場を悩ませるはずであり、特にFX市場は、リスク選好と中央銀行の金融政策との間で揺れ動くだろう。第2四半期は非常に忙しい経済カレンダーで始まる。オーストラリア準備銀行の金融政策委員会と、米国、英国、オーストラリア、カナダの重要な経済指標が多数ある。これはつまり、豪ドルの大きな値動きを予想するだけでなく、すべての主要通貨のボラティリティが高まることを意味している。
米ドル
直近発表指標
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住宅着工件数 116万2000 (予想)121万
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建築許可 129万6000 (予想)130万5000
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S&P ケース・シラー住宅価格指数 0.11% (予想) 0.3%
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リッチモンド連銀製造業指数 10 (予想)10
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消費者信頼感指数 124.1 (予想)132.5
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貿易収支 -511億ドル (予想) -570億ドル
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経常収支 -1344億ドル (予想) -1300億ドル
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第4四半期GDP 2.2%(予想)2.3%
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個人消費 2.5% (予想) 2.6%
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失業保険申請件数 21万1000 (予想) 22万
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中古住宅販売保留 -1% (予想)-0.5%
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個人所得 0.2% (予想)0.3%
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個人支出 0.1% (予想)0.3%
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新築住宅販売 66万7000 (予想) 62万
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ミシガン大学消費者信頼感 98.4 (予想)97.8
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小売売上高 -0.2%(予想)0.3%
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ISM製造業景況感指数 55.3(予想)54.2
今週発表の指標
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ADP – 非農業部門雇用者数は前回の雇用統計よりは大きく増えるだろう
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ISM非製造業景況感指数 – 58.0と前回より低下すると予想されている
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非農業部門雇用者数 - 前回の大幅な落ち込みからは大きく回復するだろう
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サポート 110.00
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レジスタンス 112.00
米国債の逆イールド – ドルの上昇には懸念材料となるか?
現在の金融市場における最大の話題は、米国の逆イールド(利回り曲線の逆転)だ。2007年以来初めて、 10年債の利回りが 3ヶ月債の利回りより低くなり、投資家を非常に心配させている。米国経済は過去50年間で7度不況に陥り、イールドカーブ(利回り曲線)は1度を除いてすべて逆転した。利回り曲線の逆転が景気後退の非常に正確なサインとなる理由は、短期金利が長期金利を上回る場合、投資家が直近の経済見通しを懸念しており、短期債に資金を縛り付けることに対するさらなる補償を求めているためだ。株式市場は不況の前にピークに達し、弱気相場入りする傾向がある。
懸念する必要があるか?短期的には「NO」、長期的には「YES」
先週、投資家が利回りの低下が株にとってプラスかマイナスかを判断しかねていたため、FXトレーダーはリスクオンとリスクオフのどちらをとるか悩まされていた。金利の低さは借り入れに適しているが、金利の低下とハト派な中央銀行の姿勢の結果として、イールドカーブは逆転した。先月、すべての主要中央銀行が国内または世界の経済成長について懸念を表明したが、米国株式は3ヶ月ぶりの高値圏にあり、株式トレーダーはこれらの警告をほとんど無視している。米ドルのパフォーマンスがまちまちなのは、外国為替トレーダーが重要なのがリスク回避(ドル買い)なのか米国の景気後退(ドル売り)なのか確信できないことを示している。短期的にみれば、イールドカーブの逆転と景気後退の間に通常12か月以上のズレがあるため、パニックになる必要はない。統計では過去60年間で9度発生したが、株式市場はそこから約8か月後までピークに達していない。これは、景気の悪化がより明らかになるまで、株式市場は短期的に利益を維持できることを意味する。また、イールドカーブは過去何度もあるように、反転、正常化、そして再び反転するものだ。
長期的に見れば、イールドカーブの逆転は、FRBとECBの成長鈍化懸念と合致しており、2020年または2021年には不況となる可能性が非常に高い。しかし、株価のように、イールドカーブの逆転が米ドルにとって必ずしもマイナスとは限らない。3ヵ月債利回りが10年債利回りを上回ったのは2008年のことで、ドルインデックスがリスク回避で急上昇する直前だった。それ以前の2006年には、ドルは最初下落したが、すぐに回復している。同じことが2000年にも当てはまり、ドルインデックスは上昇した。
利回り曲線の逆転は実際に近い将来のドルの上昇につながるが、焦点はFRBの金融政策であり年末まで利上げをしないという決定を正当化するのに十分なほど経済は減速しているのかどうかだ。ドルがどのくらい速く下がるかは、今後の経済指標に左右されるだろう。景況感や雇用統計が弱い場合、ドル/円は急速にその下落を拡大するだろう。逆に強ければ上昇することになるだろう。
英ポンド
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レジスタンス 1.3300
メイ首相のブレグジット案が議会で承認された場合、首相は辞任すると発表したが、議会の採決は334対286で否決だった。英国は4月11日までに別の案を提案するか、合意なき離脱となるが、後者は英国の経済と通貨に大打撃を与える可能性のあるシナリオだ。EUは楽観的ではなく、4月12日の「ハードブレグジット」が今やありうるシナリオと考えている。「EUは2017年12月からこれに備えてきており、完全に準備が整っている。EUは団結している。移行期間を含む離脱案合意のメリットは、「合意なし」のシナリオでは再現されない。分野別のミニ合意は選択肢にない」と述べたトゥスクEU大統領は4月10日に緊急サミットを開催し、英国からの要求について話し合うと明らかにした。現段階では3つの選択肢がある。 英国は合意なしでEUを離脱、メイ首相が辞任し、離脱の長期延期を要請、メイ首相がEUと交渉し離脱の延期を要請だ。最も可能性の高いシナリオは首相の辞任を含むもので、そうなれば英ポンドは上昇するだろう。ブレグジットは今週もポンドの変動を左右するだろうが、英国の経済指標にも注目したい。PMIが公表予定だが、ブレグジットの不確実性を考えれば改善は見込めないだろう。
ユーロ
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レジスタンス 1.1400
ヨーロッパでも国債利回りが低下している。先週、ドイツの 10年債利回りは2.5年ぶりに最低レベルへ落ち込み、2016年以来初めてマイナス金利となった。これはユーロにとって非常に弱気材料となるが、ユーロの下落は米国債利回りが同時に低下したことによって緩和された。マイナス金利の場合、ユーロは1.12ではなく1.10で取引されるべきだが、米10年債利回りも非常に低いため、実際には EUR / USDがサポートされて下落が鈍化している。ただしこのペアは下落し続けているので、このサポートレベルに達するまでにそれほど時間がかからないだろう。ドイツの10年債利回りが2016年以降初めて日本の10年債利回りを下回ったため、 ユーロ/ 円もさらに下落する可能性がある。この2週間で2ヶ月ぶりの安値に達したが、ユーロ / 円は123、そしておそらく122まで下がるかもしれない。ユーロ圏の経済指標はまちまちであり、ドイツの景況感はわずかに改善したがユーロ圏の景況感は低下し、インフレ圧力は緩和された。今週の経済指標は、米国の方が重要指標が多いので、ユーロは米国の経済指標によって上下するだろう。