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IMFが貿易戦争を受け経済成長見通しを切り下げるも、G-20財政担当責任者は下半期の成長は加速すると予想
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中央銀行によるハト派の動きにより株価は更に押し上げられる可能性
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米ドル、米国債、金は下落
IMFは先週半ばに2019年に世界経済成長率見通しを3.5%から3.3%に切り下げたものの、12日にG-20財政担当責任者らは金融緩和の影響により下半期の成長率は高まっていく見通しを発表した。しかし、IMFは米国に端を発する貿易戦争により、2008年の金融危機以来最低のペースでの経済成長を予測している。依然として大部分の米国株は先週末高値で終値を迎えたが、週次ベースでみるとまちまちであった。
先週は全体的にポジティブなニュースが続いた。まず、英国のEU離脱期限が10月31日へと延期された。加えて中国の輸出と銀行貸出が回復した。また、12日に発表されたJPモルガン・チェース (NYSE:JPM) とウェルズ・ファーゴ(NYSE:WFC)の第1四半期決算が予想を上回る好調ぶりで、これから決算発表を行う企業に対しても期待が高まっている。
まちまちなシグナルで市場は混沌
関税引き上げによるネガティブ材料と、中央銀行によるハト派な動きというポジティブ材料が合わさり、見通しがはっきりせず株価は横ばいであった。投資家は、この複雑なシグナルが生み出す迷路を通り抜けようとしている。正直に言って、このファンダメンタルを解き明かすのは専門家にとっても困難だ。テクニカルも同様に、複雑になってきている。
S&P 500は12日、0.66%高となった。ここ6か月で初めて2,900台に到達し、先週はその水準以上を維持している。先週下落したのはヘルスケアセクターのみだった。
しかし政治だけではなく、市場原理も製薬業界に影響を及ぼしている。
アマゾン(NASDAQ:AMZN)が次に大きな革命を起こす市場としてヘルスケア業界を挙げているからだ。自社が持つオンラインマーケットプレイスを活用して市場構造をシンプルにし、薬品の価格を下げることを計画している。かねてより薬価引き下げを謳ってきたトランプ米大統領はアマゾンCEOジェフ・ベゾス氏に敵意を向けている。両者の関係性がどう変わっていくのかは見物である。
JPモルガンとウェルズ・ファーゴの好調ぶりを受け、金融セクターが他10セクターの高値(1.84%高)を牽引した。両行が12日の寄り付き前に決算を発表したことから、 金融セクターは様々な市場で始値から大きく予想を上回った。
また、エンターテイメント界の巨人ディズニー(NYSE:DIS)は、11月にサービス開始が予定されている動画配信サービス「Disney+」についてのアナウンスを行い、過去最高の株価を記録した。ニュース配信後、株価は11.54%高となった。対照的に、競合のネットフリックス(NASDAQ:NFLX)の株価は前週比4%以上の下落となった。
SPXは3週連続で上昇したものの0.51%高に留まった。ヘルスケアは2.38%安とやはり不調で、エネルギー も0.07%安であった。 原油価格の上昇と、シェブロン (NYSE:CVX)株価がアナダルコ・ペトロリアム(NYSE:APC)の買収合意後に下がったことなどが背景にある。
先週のベストパフォーマーは金融セクター (2.03%高) であった。
S&P銘柄は3週連続で値上がりしているものの、上昇は鈍化している。先々週は2.06%高、先週は1.21%高となった。
この停滞は市場を複雑にしている。週間全体では停滞していたものの、12日の急騰は見逃せない。この急騰は、荒れ模様とされていた予想に反し、良好なパフォーマンスを見せた第1四半期の決算報告に対する投資家の期待を反映した形だ。
他の米国株ベンチマークのパフォーマンスがまちまちであることも下げ相場のシグナルとして考えられる。
ダウ平均株価は1.03%高になったものの、メガキャップ・インデックスは横ばいであった。イブニングスターパターン(4月4~8日)(赤丸)を超えることはできなかった。
しかしながら、三角持ち合いの上抜けは今後の回復を示唆している。ゴールデンクロスの出現に伴い、株価は上昇局面を迎えている。イブニングスターの出現は短・中期的な調整下げと捉えることができる。
過去最高値となった10月3日の26,951.81ドルを超えることができるかが次に見るべきポイントである。もし株価が最高値を記録し、取引量、好調な銘柄の幅広さ(現在蓄積/配信ラインインジケーターはマイナスのダイバージェンスを示している)を伴っていれば、我々はファンダメンタルズに関わらず下げ相場の見方を捨て、完全に上げ相場だという見通しを持つだろう。
ナスダック総合は12日に0.46%高で、昨年12月以来の上昇傾向の中で最高値を記録した。しかし、月初のゴールデンクロスに続き、寄り引き十字線が出現した。
ラッセル2000は12日に0.44%高となり、週次では、0.14%高となった。チャートは50日移動平均線を上回ったものの、2月25日の高値を下回る水準である。
株価は今後も上昇を続けると見られるが、説得力のある形で最高値を記録し続けない限りは、中期的な下げ相場の見通しを覆せない。中央銀行が市場を支えている現状があるからだ。
豪州準備銀行(RBA)も同様の矛盾に困惑しているようで、元連邦準備制度理事会議長アラン・グリーンスパン氏も株式の見通しは明るくないと見ている。グリーンスパン氏は停滞の時期について言及しなかったものの、高齢化社会に伴う給付金の増加によって経済は負担を負うと予測している。
ハト派のFRBや、リスクオンの流れにより米10年債券利回りが200WMAから反発後、債券利回りは2週間連続で上昇し、1ヵ月弱の最高水準となった。
言い換えれば、利上げはないという予測が市場コンセンサスであるものの利周りが低下基調へと戻る可能性もあると予測している。
米ドルインデックスは12日、先週の終値97.39から下落したが、1月の底値から続く上昇基調の中で昨年12月10日の高値をわずかに下回る形となった。
米ドル下落は通貨が国債と紐づいており、市場がリスクを懸念したため引き起こされたものである。しかしチャートを見てみると、200日移動平均線を反発するのは4度目となり、98.00の水準に到達する前に、11月以来のレンジを下回らない程度の下降フラッグを形成しつつある。
英ポンドは、メイ英首相がEU提案の英EU離脱の締切を10月に引き延ばす案に同意したことを受け上昇した。
金もドルと並行して下落し、リスクオフ相場の様子を打ち壊した。米ドルの悪材料が見られる中で、金は1,280ドル弱を最高値として下げ相場へ突入すると見られる。
IMFの専務理事クリスティーヌ・ラガルド氏が、仮想通貨は適切な規制を伴わなければ金融システムを不安定な状態にしうる破壊的技術だと警告した。同時に、IMFは独自のプライベートチェーン仮想通貨を発行した。
ビットコインは先週の上昇の後、十字線を見せた。しかし、2018年の2月から11月のサポートラインになっていた6000ドルの水準にあった100WMAを下抜けした後、ようやく一時50WMAの水準まで回復してきたことが窺える。