「原油価格は春を通して着実に上昇しており、初冬に底を打ってから1バレル20ドル以上回復している。
しかし、需要と供給が近づいていることについて楽観的になりすぎない方が良い。
米国の待機井戸(DUC:Wells drilled but uncompleted)によるシェールオイルの潜在的な市場への供給量は忘れてはいけない」
これは、JWエナジーの「米国のシェールオイルは、回復基調の原油価格に対する時限爆弾」と題したコラムの序文である。
注目すべきなのは、この記事は今週のものではないということである。
これは2016年夏に掲載されたものである。
TradingView: WTI原油
このコラムが書かれた2016年と同様に原油価格は2018年末に底を打ってから、今年に入り順調に回復している。しかし、一部の人は同時に米シェールオイルの驚異を懸念しているだろう。米シェールオイルの供給能力は、容易に現在のサウジアラビアやロシアによる減産を打ち消してしまうだろう。
原油価格の下落によって2014−2017年ではシェールオイルの生産が停滞していたが、シェールオイルの復活の鍵はDUCである。
DUCは、原油価格の上昇に対する時限爆弾である。原油価格が上がりDUCを完成させる動きが活発になれば、シェールオイル生産が一気に増える可能性があるのだ。
米国エネルギー情報局(EIA)のデータによると、2月にDUC数は過去最高の8,504を記録している。
3月にDUC数は4年ぶりにはじめて減少したが、たった4つの減少であり、8504から8500となった。
シェール掘削企業は抑制気味であるが、長くはない
WTI原油価格の 40%の回復にもかかわらず、シェール掘削企業はいまだに抑制気味である。企業は4年前の原油価格の大暴落の記憶は鮮明に残っており、もし時代が繰り返されるようであれば投資家や銀行は寛容ではないということを心得ているのだろう。よって、現段階では企業は配当やキャッシュフローを優先しており、下げ目線の投資家による50ドルを超えたらシェールオイル生産が増大するというシナリオにはなってはいない。
過去2ヶ月では原油価格は順調に上昇しており、WTI原油価格は63ドル以上の水準を維持している。
しかしEIAによる最新のデータでは、米国の原油生産量は増加傾向にある事が分かるだろう。
EIAは米国の7つの主要シェールオイル産出地域では、5月には日量8万バレル増で846万バレルとなることが予想している。また、3月ではシェールオイル以外を含めた米国の原油生産は1220万バレルになっている。輸出も3月では360万という記録的水準に達している。
エネルギーのヘッジファンドのAgain Capital社のJohn Kilduff氏は、米シェールオイルにおいては、特に年末までにパイプライン設備が整うことによって、DUCを完成させる動きが活発になる兆候があるという。
同氏は以下のように述べる。
「DUCは決して無用の長物ではないのです」
「DUCのキャパシティの増加は、投資家からリターン改善の圧力を受けているシェール業界の規律が高まっていることを示している。明らかに、全体的な生産量は増加傾向にあり、新しいパイプラインが今年後半に稼働すると、より多くのDUCを完成させる動きになることが予想できる」
パーミアン盆地のDUCの供給能力は日量200万バレルを超える
合計8500のDUCのうち、半分はパーミアン盆地のものである。パーミアン盆地はテキサス州とニューメキシコ州をまたがり、現在世界で最も活発な掘削地域である。パーミアン盆地におけるDUC率は、2014年と比べると500%以上になっている。米国のスーパーメジャーと呼ばれるエクソンモービル(NYSE:XOM)や、アナダルコ(NYSE:APC)を買収したシェブロン(NYSE:CVX)は1バレル35バレルまで採算が取れ、これらのシェールオイルから利益の2ケタ成長が見込まれている。
パーミアン盆地のDUCを完成して平均日量500バレルだったとしても、供給能力は少なくとも日量200万バレルにも達する。
原油を取り扱うTyche Capital AdvisorsファンドのTariq Zahir氏は次のように述べる。
「ドライビングシーズンに入り、原油価格が高値圏にあり、シェールのコストがかなり低く抑えられている場合は、特にパーミアン盆地でDUCからの供給が一気に増大する可能性がある」