NY株式市場のアナリストの価格予想は絶対当たるとは言えないが、原油トレーダーはどれほど重要視しているだろうか?
今夏ブレント原油価格が1バレル80ドルまで上がるというRBC Capitalの記事の後、原油は突然の上げ相場となった。またバンクオブアメリカも1バレル100ドルまで上がると予測していた。
昨年は他にも100ドル前後という予想が出回り、ブレント原油は5月と9月に1バレル80ドルを付けた。しかし、この高値は一時的なものにすぎなかった。10月までに原油価格は再び下落し、12月には1バレル50ドルとなった。
この手の予想はニュースの見出しを飾ることが多いが、アナリストはこまめに予想を修正しており、時折間違いもあることは念頭に置いておいた方が良い。
ヘッジファンドも夏の原油価格の見極めに向けて動き出している。
昨年の原油急落に伴い自身のヘッジファンドが20%のマイナスとなったピエール・アンデュランド氏は、新たなファンドを開設している。同氏のAndurand Commodities Discretionary Fundは、原油価格を見極めて、先手を打つと見られている。
ウォールストリートジャーナルの報告によると、この新しいファンドは「簡素なリスクプロファイル」かつ、「ボラティリティが上昇した際により素早く」売ることを可能にするものであるという。
しかし、ファンドマネージャーにとっては、自信の投資の腕前を磨くことではなく、そのファンドに投資する顧客を集めることが最優先だ。
2019年1月のRBCが報じたところでは、アナリストは2019年のWTI原油価格とブレント原油価格をそれぞれ60ドル、68ドルと予測していた。
しかし、今年に入ってまだ3か月半しか経っていない現時点で、すでに予測はWTI原油で67ドル、ブレント原油で75ドルまで上方修正され、それぞれ11.7%、10.3%増の修正となった。次の3か月半でまた予想は大きく修正されるだろう。
例えば、6月末にOPECプラスが減産合意について協議を行うが、この結果でも予想価格は大きく変動するだろう。
ロシアは減産を終わりにしたいと望んでおり、実際に12月の減産合意を十分に順守していないことも留意しておく必要がある。ロシアは減産合意において重要な立場におり、少なくとも生産量を今よりも拡大するだろう。
生産能力に余裕のある産油国は夏期に生産を増大させ、下半期の価格が下落するとみられる。米国がイランへの制裁を緩和した場合も価格は下がりうるだろう。
需要に関しても縮小しているようだ。米国のトラック輸送量は減少しつつある。トラックでの輸送は米国の総出荷量の約70%を占めているので、経済活動の良い指標になっている。
米国経済が現在好調であることは明らかである。しかし、燃料需要に打撃を与えうる成長率停滞の指標の一つとなるのがトラック輸送量である。同様に、中国の景気後退も原油価格にネガティブな影響を与えうる。
全ての市場関係者は様々な情報ソースを参照し、自分自身の予想を立てるべきである。NY株式市場のアナリストと言えど、水晶玉や超能力は使えないのだ。