ドナルド・トランプ米大統領が中国製品に対する関税を25%へ引き上げることを表明して以来、投資家は先行きを不安視している。トランプ大統領は9日、中国との合意条件の再交渉はできないと述べた。一方で習近平国家主席から「素晴らしい書簡」が届いたとし、電話会議の可能性を示した。また、トランプ大統領によると、「今週中に合意に至る可能性がある」とのことだ。9日のニューヨーク市場で一時3か月ぶりの安値を記録した米ドル/日本円は、小幅安で取引を終えた。
興味深いことに9日の米ドルは株式と同様に下落した。通常、リスク回避の姿勢が高まるとドルが買われることが多い。9日の下落については軟調な生産者物価指数(PPI)や大幅な貿易赤字が要因であると考えられる。今週発表される経済指標において最も重要なのは本日公開の消費者物価指数(CPI)だ。アナリスト予想では原油高により上昇することが見込まれている。しかし、PPIが軟調であったことを考慮すると、CPIは下振れする可能性が考えられる。CPIが予想を下回る場合、米ドル/日本円はさらに下落するだろう。また、0.4%以上の上昇を見せる場合、同ペアは上昇するだろう。
一方、米ドル/カナダドルは10日、2週間続いた持合いをブレイクする可能性がある。カナダ雇用統計の発表が予定されており、予想を下回った場合、同通貨ペアは1.35を上回るだろう。エコノミストは雇用者数の増加を予想しているが、カナダ銀行(同国中銀)の用心深い見通しやアイヴィPMIの低下、予想を下回る貿易収支など、カナダ経済は停滞しているようだ。原油価格は下落を続けているが、米ドル/カナダドルへ与える影響は限定的である。雇用統計によってカナダドルもほかの通貨に続いて下落に転じるかもしれない。
ユーロ/米ドルは上放れとなり1.1250を記録した。しかしその後、トランプ大統領が米中合意の可能性を示唆したことで、下落に転じている。同通貨ペアは上下の値動きを繰り返しており、5月の最高値である1.1265を上回るまで下降トレンドは続くだろう。本日は第1四半期GDPの公表が予定されており、ポンド/米ドルも注目すべきであろう。貿易収支や小売売上高は改善しているので、好調な結果が予想されている。同通貨ペアは1.30を上回って値動きしており、 GDPが好調であれば1.31まで上昇するだろう。