現在の原油市場に影響を与えている2つの主な要因は、米中貿易協議と米国の原油在庫の状態にある。しかし、トレーダーは5-6月のサウジアラビアの原油生産と輸出の計画にも注目するべきだ。これらは今後数週間から数ヶ月の間に需給バランスにより大きな影響を与えるからである。
5月5日にトランプ大統領が中国への追加関税を発表し、米中貿易戦争の再熱への警戒が高まった後に原油価格は下落していた。これは、米中貿易戦争による世界経済低迷から原油の需要が減るという懸念によるものである。
しかし、実際にすぐに景気低迷が起こり原油需要が減るわけではなく、この下落は市場心理やアルゴリズム取引の動きが反映された結果であろう。5日の下落から一度回復していたが、6日では再び下落した。そして、7日では米中貿易協議への期待によって原油価格は回復していた。
EIAによる週間原油統計も原油価格に影響を与えてきた。先週のEIAのデータでは原油在庫が多く蓄積していることを示し、原油価格が下落した。今週では 予想外の原油在庫の減少によって、原油価格はやや回復をみせていた。
世界の原油供給面ではサウジアラビアのニュースによって左右されるだろう。主な問題は、米国による制裁でイラン産原油の供給がなくなる中で、サウジアラビアが生産量や輸出量を上げるかどうかである。
トランプ米大統領や国務省は、サウジアラビアの原油生産量や輸出の増加を予想しているが、サウジアラビアは他国のニーズがある場合のみ増産をすると述べている。
間もなく6月輸出の受注が始まり、原油市場の動向が見えてくることになるだろう。エナジー・インテリジェンス社によると、サウジは5月に日量1000万バレルから1030万バレル生産する計画をしているという。この増加は、ラマダンがある今月の気温の上昇や電力の需要増加によって、サウジ国内の原油・ガスの需要増加によるものである。
サウジアラビアの輸出は、4月の日量700万バレルの水準を超えることを予定していないだろう。当局者は、サウジは元々イラン産原油を輸入していたクライアントからの注文を受けていることを述べている。実際に、サウジアラビアは6月の輸出は日量700万以下に抑えるつもりだろう。サウジアラムコは、アジア向け原油に対して値上げを行っている。よって、5-6月の原油供給は逼迫することが予想されている。
サウジアラビアの思惑は、かつてイラン産原油を輸入していた顧客が値段を上げてでも購入してくれるのならば、供給料を増やすということだろう。これらの顧客は、イラン産原油を比較的安く購入し、配送料や保険料に置いてディスカウントを受けていた。米国の制裁に従うしかない状況で、サウジは原油の値上げをするだろう。トレーダーは、これらの動向が市場に影響することを予想している。
他にも、ベネズエラの政情悪化、リビア内戦、ロシアの汚染事故などによって現在の原油市場は供給面での懸念がある。
不明瞭な米中貿易協議や、米原油在庫によって原油価格は左右されているものの、トレーダーは特にアジアの需要によって供給不足の可能性があることを意識するべきだろう。