米小売大手ウォルマート(NYSE:WMT)株は現在、過去最高値に達している。
18日の終値は109.65ドルで、同株は過去1か月で約8.72%の上昇となっている。なお年初来では17.71%の上昇である。
米中制裁関税の応酬で小売業者のコスト増・売上減が見込まれるにも関わらず、同株は堅調に最高値を更新している。
我々が昨年12月の記事でウォルマート株買いを勧めた際、投資家らの懸念材料はアマゾン(NASDAQ:AMZN)との競争がウォルマートの長期的な成長を脅かすことであると述べた。
しかし、ウォルマートはこの熾烈な争いを勝ち抜く戦略の有用性を証明してきた。
同社が持つ実地店舗数の多さは強力な資産と言える。加えて、5月16日に発表された2-4月期決算でも好調な業績を示していた。
同四半期の決算では、米国内店舗別売上高は過去9年で最高となった。オンライン売上高は前年から37%増となり、Eコマース部門は過去8年間連続の成長となった。
ウォルマートの勝機
ウォルマートの実地店舗は、かねてよりEコマース競合他社が持ちえない優位性として認められてきた。
同社は何千点もの日用品を対象に、米国内での無料翌日配達サービスをスタートした。また、食料品配達の対象地域は年末までに国内の4分の3をカバーする見通しである。
事前にオンラインで注文した商品を車から降りずに受け取れるクリック・アンド・コレクトサービスも急速に拡大している。利用可能な米国内店舗数は去年だけで1000軒増加し、現在は2450軒となっている。
対するアマゾンのピックアップサービスは現在22か所に留まっている。
投資銀行のUBSによるとオンライン食料品小売市場は今後急成長が見込まれ、2022年までにEコマース市場全体の4割を占める見通しだという。
収入基盤を多様化すべく、同社は小売業界における従来の強みの他にも様々な成長機会を模索している。
例えばターゲティング精度を高める施策として、店舗での購入品とウェブサイト閲覧履歴両方のデータを活用したデジタル広告事業が挙げられる。
同社の株価に関しては、公益事業や基本食料品株買いの流れもまたウォルマート株の買い相場を支えている。
世界的な経済後退予想を受け、今後は高成長銘柄よりも食料品のような安定銘柄に人気が集まることが予想される。
ウォルマートのような生活必需品を扱う小売業者は、低成長期にも耐えうる安定性が強みだ。
総括
現在のウォルマート株価を割高だと感じる向きもあるかもしれない。
しかし、同社が過去数年間で大幅な改革に取り組んできたことは無視できない。
同社のEコマースやコア事業である実地店舗の運営を考慮して、まだ成長の余地があると我々は考えている。
加えてマクロ規模での追い風や堅実な配当計画を考慮すると、同社は市場全体が低迷する時期も耐えうる力を有していると言えるだろう。