近頃、配当投資家は高い利回りを求め、より挑戦的な姿勢をとり始めている。世界の中央銀行が不況対策として金利を引き下げる準備をしている中で、低金利環境への期待から、投資家はリスクオン姿勢を強め、高いリターンの株式を求めるようになっている。
これがS&P 500が20日に2953.18ドルの最高値を記録した主な要因の1つである。
下記の3銘柄は、高配当ではあるものの、我々が避けるべきだと考える株式である。
1.フォード・モーター
米大手自動車メーカーのフォード・モーター(NYSE:F)は高い利回りを求める投資家にとっては魅力的に映るだろう。26日の終値は9.84ドルであり、配当利回りは6%以上もある。これはS&P 500の平均配当利回りがわずか1.9%であることを考慮すると、非常に高配当であると言えよう。
ただ同株を購入する前に、その配当が安全で持続可能であるかを確かめるべきである。同株の配当性向は80%以上であり、業界平均の22%の約4倍の数値となっている。
フォードは過去数年間とても厳しい状況にあった。堅調な世界経済と消費者の需要に支えられ長年売上高を伸ばしてきた同社は、現在強い逆風に直面している。セダン車の需要が減速したこともあり、同社の昨年度の純利益は半分以下にまで落ち込み、その後110億ドル規模のリストラを行うことを発表した。この計画の下で数千人規模の解雇、海外工場の閉鎖や、電気自動車や無人自動車生産のための設備の建築が行われる予定だ。
フォードは収益性を改善するため、このような大規模なリストラ計画を進めたものの、投資家の関心を十分に惹くことはできなかった。同社の1株当たりの四半期配当は0.15ドルと高配当であったが、その持続可能性が懸念され、同株は昨年の夏以来となる10ドルを下回った。
もし同社が今回のリストラ計画で結果を残せない場合、同社の信用格付けはたちまち引き下げられ、配当も少なくなるだろうとアナリストは予想している。米国経済が不況に陥ったり、急速な減速に見舞われたりした場合、燃費の高いSUVの需要は減衰するだろう。したがって我々は、利回りこそ高いものの、現在の不確実な経済環境でフォードの株式を買うのは避けたほうが良いと考える。
2.AT&T
米最大手の通信企業であるAT&T(NYSE:T)も無視できないほどの高配当を誇る銘柄の1つである。6月26日の終値は32.55ドルで、その年間利回りは6.3%、EPSは0.51ドルとなっている。
しかし同株には大きなリスクも存在する。消費者がネットフリックス(NASDAQ:NFLX)のような安価なエンターテイメントを求めるようになる中で、同社は一気に現代メディア界へ参入を進めている。この厳しい環境を生き抜くため、同社はHBOやCNNなどの人気コンテンツを有するタイム・ワーナーを850億ドルで買収した。
この買収によりAT&Tの有利子負債は増大し、経営が複雑性を増してしまった。同社のネットデットは1690億ドルであり、タイム・ワーナー買収のため借り入れた負債の75%が今年末までに返済される予定だと述べている。
AT&Tが今回の経営再建計画で結果を残せない場合、同社の総額150億ドルの配当金は縮小されると予想される。このように負債の過剰状態が長引いているため、リスクの高いAT&T株式購入は避けた方が良いと我々は考える。
3.シュルンベルジェ
世界最大の油田探索企業であるシュルンベルジェ(NYSE:SLB)は4月の高値以来約20%の急落を見せ、6月26日の終値は35.58ドルとなった。この背景となったのは、石油市場の成長が減速していることや、石油市場の需給状況が困難なものなった中で、同社が支出計画を縮小するのではないかという懸念が生まれたことである。この弱気な状況が利回りを6%にまで押し上げる要因となった。
過去5年で67%以上下落した株式は一部の逆張り投資家にとっては魅力的に映るかもしれない。また年間利回りは5.2%で、5年利回りの平均の2倍以上となっている。
しかし支出は抑制され油田探索の需要も減る見通しの環境下、S&Pグローバル・レーティングはシュルンベルジェに対して1ランク格下げをしている。
また、この不確実な世界経済や地政学的環境の中で、原油価格は上昇を維持できない可能性がある。今の時期にシュルンベルジェの株式を購入するのは避けたほうがいいだろう。
総括
高配当銘柄に投資することが、いつも利益をもたらすとは限らない。投資家はバランスシートの健全性、低い財務レバレッジ、高配当をもたらした年月の長さに注目しながら、慎重に株式を選ぶべきである。そこを踏まえれば上記の3銘柄が期待に応える結果にはならないと考えられる。