2019年上半期の 原油市場は、米国によるイランに対する経済制裁やペルシャ湾地域の緊迫化、世界経済の減速が焦点であった。
そして以下が2019年下半期の原油市場で、注目すべき3つのポイントである。
1.米中貿易協議
米中貿易協議は市場心理と今後の見通しに大きく影響すると考えられる。
ドナルド・トランプ米大統領と中国の習近平国家主席はG20大阪サミットで29日午前11時半に会談する予定である。
29日の会談で貿易協議が合意に達するとは考えられていないが、会談の結果は世界経済や原油市場の見通しに大きく影響すると見られている。
貿易協議の再開や関税撤廃の示唆が最良のシナリオである。
2019年内に米中が合意に達する場合、世界経済や原油市場にとって好材料となるので、原油価格は上昇することが予想される。
2.米原油生産・輸出
6月26日はEIA週報が発表された。米原油の動向は、原油市場を左右している。米原油生産量は堅調であり、今後在庫が増加する場合は原油価格は下落する可能性が高い。
現在、米国はパイプラインなどの原油インフラの改善・構築に着手している。
産油地から精製所や輸出ターミナルへと効率的に原油を輸送できるようになれば、原油在庫が過剰に積み上がることは少なくなると考えられる。
6月26日のEIAの発表によると、上記の取組みによって、輸出は過去最大となる日量940万バレルとなり、在庫は1280万バレル減となった。加えてムニューシン米国財務長官の米中交渉の再開についての肯定的発言によって、同日の原油価格は上昇した。
EIAの発表における懸念の一つは製油所の稼働率が落ち込んでいることだ。米国の製油所が完全に稼働していないということは、製油所が石油製品に対する需要が弱まることを予期しているか、必要な原油を確保できていないことを意味する。
また、フィラデルフィア製油所での火事とそれに伴う閉鎖決定があり、そこで処理されていた日量33万5000バレルの原油需要が消失することになる。
それらの原油は本来なら別の精製所に販売されるか、輸出や貯蔵されていただろう。疑問として浮かびあがるのは、他の精製所が増産によってどの程度原油需要を埋め合わせられるかだ。
製油所閉鎖の報道はEIAの発表や米中貿易関連の報道などの好材料と同時に発表されたので、原油価格への影響は定かではない。
3.OPECとOPECプラス
7月1日・2日に開催予定のOPEC総会は2019年下半期における原油市場の動向を指し示すはずだ。
ベネズエラとイランに対する米国の経済制裁によって、協調減産分を上回ってOPECの総産油量は減少している。しかし、サウジアラビアやイラクなどの主要産油国の動向には注目すべきである。
サウジアラビアは割り当て生産量を下回っているが、下半期には増産する可能性がある。サウジアラビア国営のサウジアラムコは、韓国企業と事業提携することで合意した。また、インドでの事業拡大も視野に入れている。
サウジアラビアが需要に見合うだけ生産量と輸出量を増加させる場合、原油価格は下落するだろう。
原油需要のピークである夏が終われば、サウジアラビア国内の原油需要は減少に転じ、より多くの原油を輸出に回すことが出来る。
一方、イラクは割り当て量以上の生産を継続し、積極的に増産している。
OPEC総会で現状の協調減産の延長で合意に達した場合であっても、原油市場はイラクの原油生産に注視すべきだろう。
イラクはさらに多くの原油を生産し輸出するために、あらゆる手段を尽くすだろう。また、サウジアラビアは財政的な要因により増産に踏み切る可能性があるので、目が離せない。
OPECプラスに関しては、ロシアはパイプライン「ドルジバ」における原油汚染により生産量の低下が強いられたため、協調減産の延長を切望しているようだ。汚染問題は現在も解決していない。ひとたびこの問題が解決されれば、OPECプラスの協定に反しても、ロシアは増産のためにあらゆる手段を模索すると見られている。同国は生産協定を破ることに躊躇いが無い。汚染問題の発生前には、大幅な過剰生産に至るペースで生産を続けていた。ロシアが増産する場合、下半期の原油価格を下押しする可能性がある。