19日、英船籍のタンカー「ステナインペロ」がイランの精鋭部隊「革命防衛隊」によって拿捕された際、原油価格はわずか1.1%高であった。これまで、中東情勢の緊迫化に対して原油価格はそれほど反応しなかったが、トレーダーは中東情勢と原油市場の今後の動向に関心を寄せている。
中東情勢の緊迫化に対して、原油価格が反応してこなかったのは何故だろうか。以下の要因が考えられる。
1.原油需要の低下
原油需要の鈍化を示すサインが数多く見られており、原油価格を下押ししている。米中貿易や軟調な経済指標などの原油需要鈍化への懸念が、中東情勢に対する懸念を上回っているのだ。
2.原油輸出は実害を受けていない
イランは原油輸出を妨害するようなことは何一つ行っていない。6月にイランによって拿捕されたタンカーは原油を運んでいなかった。タンカーの拿捕が報じられる際、原油輸出が妨害を受けたかのように語られるが、TankerTrackers.comなどのサイトによって、すぐに事実を確認できる。
3.既に織り込み済み
中東情勢にまつわる地政学的リスクは既に原油市場に織り込まれているのだ。先週、米イラン間の緊張が緩和した際に原油価格が下落したことからも、このことは明らかである。この報道はすぐに否定され、再び価格は上昇に転じた。このことは、原油価格が既に中東の地政学的リスクを織り込んでいることを表している。
4.拡大する米原油生産
米原油生産は原油市場において非常に重要な要因である。米国は日量約1200万バレルの原油を生産しており、輸出量を増加させている。米エネルギー情報局の週報によると、米原油生産・在庫・輸出・消費は、中東情勢以上に原油価格に対して影響力を持っている。
それでは、いつまでこれら4つの要因は原油市場を下押するのだろうか。それは場合によるだろう。
原油価格が継続的に上昇を続けるのは、上述の状況が2つ以上変わった時であると考えられる。例えば、米中間で貿易合意に達する一方、米国は対イラン制裁を緩和する、などである。このような場合、原油価格は強気相場となることが予想される。
また、イラン情勢がより深刻化する場合も、原油価格は上昇する可能性がある。イランが原油を運ぶタンカーに危害を加える、もしくはペルシャ湾岸で原油流出を起こすなどを行った場合、原油価格は上昇し続けるだろう。このレベルでのイランによる妨害活動は、現在の原油価格に織り込まれていないのだ。
トレーダーは、原油価格に多大な影響を及ぼす恐れのある中東情勢の進展に注目すべきである。