現在はベライゾン(NYSE:VZ)のような通信業界企業に入れ込むタイミングとは言えない。消費者のインターネット上の動画視聴サービスへの移行に伴い、ケーブルテレビ契約が減少し、ケーブル事業からの収益は減少傾向にある。加えて、インターネット市場での激しい競争も同社の利益率を逼迫させている。
このような背景から、同社の第2四半期決算は振るわない結果となりそうだ。この状況を受け、同社株価は既に市場全体を著しくアンダーパフォームしている。S&P 500が史上最高値を更新し20%高を超える値上がりを見せる中、同社株は2%高に留まっている。7月31日の終値は、1.3%安の56.64ドルとなっている。
このような厳しい競争環境の中、米国の通信業界大手は各社あらゆる戦略をとっている。例として、AT&T(NYSE:T)は昨年タイム・ワーナーを850億ドルで買収し、動画ストリーミングサービスを強化し現代メディア界の巨人へ生まれ変わろうとしている。
一方先週、米司法省は米Tモバイル(NASDAQ:TMUS)によるスプリント買収を承認した。一部事業、周波数帯の売却により、司法省の提示する「携帯大手4社体制」という条件を呑み、問題をクリアしたと見られる。
ベライゾンが掲げる一手
そんな中、ベライゾンは成長に向けて異なるアプローチをとっている。同社は巨大なM&Aでバランスシートを膨らませる事などはせず、同社インフラの改善とコスト削減に集中して取り組んできた。昨年同社CEOに就任したハンス・ベストベリ氏は、AT&Tやコムキャスト(NASDAQ:CMCSA)等が追及してきたエンターテイメント分野での巨額の買収を避けてきている。
代わりに、同社ネットワークを早急に改善するという戦略に地道に取り組んできた。昨年のストレート・パス・コミュニケーションズ買収により、5G回線開発の競争で一歩抜きん出ている。5G回線の開発には業界全体が取り組んでおり、通信速度上昇と新たな収益源の開拓を目指している。
5G回線は、自動運転車・スマートホーム・リモート外科手術等様々な技術に応用され、鍵となる分野だ。同社はこの分野において確実に先行している。
同社は昨年10月、5G回線を使用した住宅用ブロードバンド・テレビ回線の提供を4都市において試験的に開始している。2019年末までにこれを30都市以上に拡大する予定だ。
この緩やかだが堅調な同社の成長戦略は、ニュースのヘッドラインを飾るほど注目されてはいない。一方で、成長モメンタムの維持に寄与しているのは確かだ。同社は第1四半期決算において、純利益に関して昨年の45億ドルから11%増の50億ドルを計上している。 四半期売上高は、1%増の321億ドルとなった。
同社は2021年までに100億ドルのコスト削減を目指している。自主退職プログラムや費用節約によって、同社は第1四半期末に30億ドルの費用削減に成功している。
総括
米通信業界の厳しい競争状況を踏まえ、8月2日に予定されるベライゾン決算報告は、同社株の買い材料を提供するとは考えづらい。しかし我々は、同社のダウンサイドリスクは小さいと考えている。集中的な成長戦略、財務健全性、増配の継続性等を考慮すると、同社は長期投資家にとって比較的堅実で安全な選択肢と言える。