トランプ大統領のツイートによって、市場のバランスは大きく狂わされている。トランプ氏が中国への関税を上げると発言し、USD/JPYやAUD/USDは26日のアジア時間開始とともに大きく下窓を開けた。
NY時間ではトランプ氏が、中国は米中貿易協議再開を要望する電話を2回かけて来たと発言すると、アジア時間の窓を完全に埋めて上昇した。
現在の為替相場は、このように要人発言によって大きく動いてしまい、トレードには一層の注意を要する状況になっている。
NYダウ平均株価やドル円のU字回復は、市場はトランプ氏の発言に対して期待している現れということになる。
しかし、トランプ氏の中国に対する発言はとめどなくトーンを変える中、今回の件についても米中貿易戦争が進展したり、このまま株価が回復することには懐疑的である。中国側からは、協議が再開するという発表はまだないままである。中国国営の新華社通信は先週末に「米国が関税制裁や中国に対して圧力を強める場合、米国の制裁に対して立ち向かい、正当な権利を守るという決意を固めるだけである」としている。
中国側が電話を行ったことを認めることはないだろうが、そのようなことがない限り、ドル円の回復は続くことはないと考えられる。
とはいえ、先週末のG7会議の後では、米日や米欧の関係は改善したと言えるだろう。
トランプ氏は26日、EUに対して自動車の追加関税を発動せず平等な貿易協定を合意できる考えを示した。また、日本に対して現段階では自動車関税(乗用車2.5%)を見送ることで一致している。
ユーロ圏では、ドイツの景気後退の懸念が高まっている。独Ifo景況感指数は2009年の低水準まで低下している。そのような環境下で、EUにとって関税のリスクの低減は、ユーロを支えることになる。また、英国は合意なき離脱の可能性は高まっている中、ポンドは引き続き売り圧力を受けるだろう。
テクニカル的にAUD/USDは底を打った兆候は見られる。
26日の早朝67セントを下回った後、その日の終わりにかけて急激に回復している。リスク選好度の回復や逆イールドの解消以外に、豪ドルを上昇させる確定的な材料はない。NZドルやカナダドルも上昇したが、豪ドルの上昇と比べるとはるかに弱かった。
NZドルの上昇は、貿易収支が赤字で市場予想を下回ったことにより限定的となった。貿易収支が市場予想を下回るのは今年3回目である。またUSD/CADは現在強いトレンド転換中で、1.32まで下落する可能性もある。