OPEC総会には、長期的にはともかくとして、少なくとも一時的には原油価格を上昇させる力が残っている。このことはOPECが12月の総会で更なる減産を決定する可能性があることを22日にロイターが報じてから、WTI原油先物が1.6%、ブレント原油先物が1%上昇したことからも見て取れる。
ただ依然として疑問は残っている。1つはOPEC加盟国が更なる減産を支持するのかというもの、もう1つはOPECの政策が原油価格を長期的に引き上げることができるのかというものである。
減産は順守されるのか
減産実施に当たっては、OPEC加盟国の意思統一が図れていないという障害が存在している。サウジアラビアは更なる減産を実施する前に、現在設定されている生産量を順守するよう追及すると言われている。このことは同国が既に割り当て以上の減産を実施しているのに対し、イラクやナイジェリアが定められた生産量を守っていないことを踏まえれば理解できるだろう。
仮にOPECが12月の総会にて全面的な減産で合意したとしても、全加盟国がこれを順守することは期待できず、また十分な量の原油が市場から消えるかは保証できない。つまり、更なる減産の決定が持続的な価格の上昇に繋がるかは不透明なのだ。
さらに米国の原油生産量及び輸出量の増加が、世界の原油需要の増加に対応できてしまっているという問題も存在する。2020年には原油需要は日量100万バレル以下の増加に留まると言われており、OPECのみで減産を実施しても価格上昇に繋がるとは考えにくい。
またOPECプラスの加盟国であるロシアについても、減産の合意を順守できなかったことを踏まえれば、更なる減産を順守するとは限らないと言えるだろう。ロシアのアレクサンダー・ノバクエネルギー相は23日、OPECプラス加盟国に対しては、更なる減産について正式な提案はなかったと述べている。
トレーダーの取るべき方針
サウジアラビアが更なる減産に対し積極的でないこと、また減産では大きな効果が期待できないことを踏まえると、我々はOPECの減産方針について懐疑的な姿勢を保つ必要があると考えられる。ただ12月5日の総会が近づく中で減産について更なる議論がなされる可能性はあり、また次回の総会が短期的には原油価格に影響を与えることについても十分に考えられる。
また、サウジアラビアが国営石油会社であるサウジアラムコの評価額を上げるために、IPOに先立って更なる減産を目論んでいるという考えは誤解である。同国のエネルギー省がIPOのために原油価格を上げようとした証拠は存在していない。またIPO後にサウジアラムコの株価を引き上げたいとすれば、価格上昇に繋がるとも限らない減産よりも、売上高と利益の追求のための増産を行うだろうと考えられる。