※この記事は11月7日に投稿されました。
OPEC総会は約一ヶ月後に控えているが、その総会へに対する予想はすでに原油価格に影響を与えている。
11月6日ではOPECの産油量が多い一部の国が、追加減産を主張しないという報道によって、ブレント原油とWTI原油は1.5%の下落となった。
当初は減産を示唆する発言が相次ぐ
12月に追加減産を行うかどうかという議題は、OPECのバルキンド事務局長が10月の初めに追加減産を行うことも検討していると発言したことから議論が加速した。
そして10月29日、サウジアラビアの新しいエネルギー産業鉱物資源相であるアブドルアジズ・ビン・サルマン(Abdulaziz bin Salman)王子が、サウジは追加減産に対して用意があると発言した。
11月4日では、イランのビージャンナムダル・ザンギャネ(Bijan Namdar Zanganeh)石油相も同様に、OPEC総会で追加減産が決定されることを示唆していた。
しかし、これらの発言に対して真に受けない方が良いだろう。実際は現在の割り当て目標に対しての追加減産は考えづらく、12月の総会で産油国の賛同が得られる可能性は低い。
言葉の罠
OPEC総会が近づくにつれ、「減産」の言葉についてより一層吟味する必要がある。
サウジのアブドルアジズ王子(新エネルギー相)は7日、特に過剰に生産してるイラクとナイジェリアに対して減産を呼びかけ、強制的にでもOPECで協調減産をのませるつもりであると発言している。注目するべきは、この報道の「減産」が指し示すものは何かということである。
この言葉が意味するのは割り当て目標値において追加減産が行われるという訳ではなく、単に現在設定されている目標値を守っていない国々含めて遵守させるように動くという意味に過ぎないと考えられる。
サウジの新エネルギー相によるミスリーディングな発言はこれが最初ではない。サウジアラムコ製油所が攻撃を受けた9月の記者会見で、同氏は「output」と「production」という用語において多くの誤解を生み、サウジが輸出用にどれだけの石油を生産するか、貯蔵された石油を使ってどれだけ輸出するかに混乱が招かれていた。
我々は要人発言の精査の上で、OPECが割り当て目標値においての追加減産が行われるかどうか、もしくは単に現在の割り当て目標値のまま生産量の削減が行われるかを判断しなければいけないだろう。
イラクの反政府デモ
注目すべきもう1つの重要な問題は、イラクの反政府デモである。
デモ隊はイラクの最大の港であるウンム・カスル港において妨害活動を行い、通常の2割程度の運用となっていた。30日では業務を完全に停止している。デモ隊は政府の原油による収益に対し妨害活動を行っている。
デモ隊による石油関係施設などへの妨害活動によって、過剰生産とされるイラクは自然と減産と向かう可能性がある。
注目すべきその他の要因
OPECの各石油生産国は、自分の国の利権を守るために動いており、OPEC総会の場においてさらなる減産が決定するとは考えにくい状況である。
イランにおいては例外的に減産を支持している。イランは減産を免除されており、他国の減産は自国の利益に繋がることに他ならない。
サウジアラビアは生産量を増やしてはいるが、割り当て目標値の中に留まっている。これは9月のサウジアラムコに対する攻撃によって失われた貯蔵庫の原油に対して、補填が行われているためである。
OPEC総会の数日後には、サウジアラムコのIPOが予定されており、サウジアラビアの政策に影響を与えることになるかどうかは疑問が残る。
追加減産が決定されるというよりは、アブドゥルアズ王子が指し示すように、既存の合意された目標値を厳守させることを推し進めることが考えられるだろう。
また過剰生産とされるイラクにおいては、上記で述べたように現在のデモによる石油施設への影響で自然に減産となるだろう。
総括:OPECによる協調体制はとれておらず、12月のOPEC総会で追加減産が決定するとは考えにくい。一方で、イラクのように他のファクターによって減産される可能性がある。