今週は複数の大手小売企業が決算発表を行う。注目すべきポイントは、小売業に対するネガティブなイメージを消し去ることができるか否かである。
また、バリュー投資家にとっては興味深い決算になるだろう。
1.ホームデポ
ホーム・デポ (NYSE:HD)はこの1年間、好業績を叩き出してきた。過去1年間の同株は、S&P500を約20%アウトパフォームしている。
過去2年間に渡り、既存店売上高は約5%増で推移していたものの、前四半期決算では3%増にまで落ち込んだ。一方、2019年の売上高は、2.3%増と予想されており、過去2、3年間の5~7%増と比較して見劣りする。しかし、マクロ的な要因は同社の追い風となっている。住宅価格は上昇の一途を辿り、消費者支出も依然として堅調である。
株価上昇が予想される理由:既存店売上高が5%増となった場合、投資家心理は改善し、前四半期の成長鈍化が一時的なものであったことが証明される。また、材木価格の上昇が言及される場合、株価はさらに上昇するだろう。
2.TJXカンパニー
ディスカウントストア大手のTJXカンパニーズ (NYSE:TJX)は、年初来で43%高となっており、ナスダック100指数を12%アウトパフォームしている。同社の株価はハイテク株を凌ぐ上昇を見せている。
同株の上昇の背景には、昨年の株価下落が過剰反応であったことが考えられる。実際、同社の直近4四半期分の売上高は60四半期連続で上昇している。
今回の8~10月期決算では、既存店売上高が焦点となる。5月~7月期決算では既存店売上高が2%増となり、2~4月期決算の5%増を下回った。また同社の予想は1~2%増となっており、二期連続で軟調な結果となることが予想される。一方で、売上総利益は既存店売上高が前期比減となった場合でも、約28%増で安定してきた。ただ、例え予想を下回る決算を示した場合でも、特に悲観すべきではないだろう。同社は米国国内や国外において、数多くの成長機会を有している。
株価上昇が予想される理由:既存店売上高が2%を上回り、TJXカンパニーがホリデーシーズンの見通しを上方修正した場合、株価は上昇すると考えられる。クリスマスなどのホリデーシーズンを含む11~1月期決算は同社にとって非常に重要である。良くも悪くも、今期の決算以上に11~1月期の見通しが注目される可能性が高い。
3.ターゲット
ターゲット (NYSE:TGT)は、過去1年間で2つの成長戦略を施行してきた。顧客体験向上のための店舗改装とEコマースである。それにより、小売業の競争が激化する中で、同社は持続的に成長することが可能となっている。
今回の決算で注目すべきは、同社が「デジタルチャネルセールス」と呼ぶオンラインの売上高である。5~7月期決算のデジタルチャネルセールスは、34%増となった。しかし、オンライン売上高は全体の内わずか7.3%でしかなく、依然としてEコマース事業に成長の余地があることを示している。
他方、同社にとって重要な指標の1つである営業利益率は、上昇を続けている。5~7月期決算では、コスト削減を受け、営業利益率が6.4%から7.2%へ上昇したことが示された。
株価上昇が予想される理由:Eコマースは、ターゲットの成長にとって重要な要因となりつつある。また、利益率を改善することは、同株が継続的に史上最高値を突破するための確実な方法の1つである。
4.メイシーズ
多くの小売業者が時代に合わせた戦略を取る一方、メイシーズ (NYSE:M)は不振に喘いでいる。
同社の株価は現在、約16ドルとなっており、1996年の時と大差ない値がついている。同社は複数の大きな懸念材料を抱えている。
8~10月期の同社は、今年に入って最も軟調な既存店売上高に直面している。昨年10月は寒冷な気温であり、同社の業績を下支えした。しかし、今年の気候は同社にとって望ましくないようである。8月のコンファレンスコールでは、8~10月期決算が芳しくない結果となることを、前もって謝罪した。また一方で、ホリデーシーズンを含む11~1月期決算で巻き返しを図ることを告げた。
株価上昇が予想される理由:メイシーズは既に、過去10年間での最安値に近い水準で取引されている。結果として、同社の配当利回りは9.3%へと跳ね上がっている。また、8~10月期決算が低調な結果となることを表明しているが、それは業績が上振れした際に、市場を驚かせるためであろう。一方、同社は11~1月期決算に自信を持っており、2020年から業績が改善するかもしれない。
5.フット・ロッカー
フット・ロッカー (NYSE:FL)は、我々がお勧めするバリュー銘柄の1つである。その理由としては、アナリストは、スポーツやアパレル、靴小売業の企業を過小評価する傾向にあるからである。
実際、同社の業績はそれほど堅調ではない。過去4四半期に渡って、売上高が200%増となりその後、200%減となった。しかし、同社を巡る環境はそれほど悪いものではない。ナイキ (NYSE:NKE)は、アマゾン・ドット・コム (NASDAQ:AMZN)で靴の販売を取り止めている。また、消費者支出は依然として高い水準にある。
5~7月期決算における既存店売上高は、前年同期の0.8%減に対して0.1%減となっている。また、2018年上半期の既存店売上高は2%減であった一方、2019年は年初来で1.5%増となっている。
また、同社の株価は十分に低水準なので、価格下落リスクは少ないだろう。
株価上昇が予想される理由:フット・ロッカーへの評価が見直される可能性がある。同社の株価は割安となっているが、バリュー投資家にとっては絶好の収益機会である。