市場の関心はZoom(NASDAQ:ZM)に集まっている。年初来で株価が2倍以上に上昇した後、消費者と規制当局は同社のプライバシーとセキュリティに懸念を示している。現在、同社の株式は反落している。
新型コロナウイルスの流行で各国の都市がロックダウンされたため、何百万人もの労働者や学生がZoomを利用するようになった。3月には、Zoomのデイリーユーザーが以前のピーク時の1000万人から2億人以上まで増加した。
しかし、一気に利用者が大幅に増加したために、Zoomの脆弱性が明らかになった。米連邦捜査局(FBI)のボストン担当局は30日、「zoombing(Zoom爆弾)」について警鐘を鳴らした。担当地区内の高校2校で、オンライン授業中に、招待されていない参加者が乱入する事件があったとのこと。FBIはZoom上の会議を公開したり、リンクを広く共有したりしないようにユーザーへ呼びかけた。
ロイターによると、イーロン・マスク氏が創業したのロケット会社のスペースXは「Zoomアプリはプライバシーとセキュリティ上で重大な懸念事項がある」と述べ、従業員のZoomの使用を禁止した。
また、同社は個人情報を違法に開示している疑いでユーザーから訴えられている。連邦裁判所に提出された訴訟によると、同社はユーザーがZoomアプリをインストールまたは利用した際に個人情報を収集し、適切な通知なしにフェイスブック (NASDAQ:FB)を含む第三者に共有しているとのこと。さらに、ニューヨーク・タイムズは、同社がニューヨーク州司法長官から調査を受けていると報じた。
悪材料が続出
Zoomのプライバシーやセキュリティが疑問視される中、同社の株式は3月23日の高値である164.94ドルから約35%安となっている。6日の終値は128.2ドルとなっている。
しかし、プライバシーやセキュリティの問題は、同社のビジネスモデルを揺るがすとは考えにくい。他のソーシャルメディア企業はプライバシー問題などに直面しながらも、成長を遂げている。
実際、これらの悪材料にも関わらず、同社を高く評価するアナリストもいる。
Sanford C. Bernstein社のアナリストは、同社の有料ユーザー数が劇的に急増しているため、同株はお勧めできると述べた。また、同アナリストは、「どこの地域であっても7~20%のユーザーが個人向けの有料プランに課金している」と語った。さらに、この流れを受けて通年業績が「数億ドル」増加する見込みであると付け加えた。
Zoomは先月、通年売上高を9億500万ドルから前年比45%増となる9億1500万ドルに上方修正した。
また、RBCキャピタル・マーケッツは、Zoomのアプリのダウンロード数が急増しているデータを引用して、目標株価を110ドルから125ドルに引き上げた。
さらに、上述の問題を受け、同社は今後3ヶ月間で問題解決のために必要なリソースを全て捧げると述べた。
同社最高経営責任者(CEO)のエリック・ユアン氏は1日、Zoomユーザーへのメッセージで「私達はZoomアプリのプライバシーおよび安全性の問題を認識している」と述べた。また、「現在では予想外の用途でアプリを利用してくれるユーザーが増え、プラットフォームの構想時には想定していなかった課題に直面してる」と語った。
総括
Zoomの株式は現在、大幅な上昇の後に反落している。今後の株価は、プライバシーとセキュリティの課題を解決できるか否かに依存するだろう。
しかし、新型コロナウイルス終息後はテレワークへのシフトが加速することが見込まれるため、同社の成長は持続すると見られる。