エネルギー大手のエクソン・モービル (NYSE:XOM)の株価は、今年に入って急落している。同社の命運は、新型コロナウイルスに端を発した不景気と密接に結びついている。
企業活動の減速や外出制限等を受け、原油需要は低迷している。同社の株価は3月中旬に暴落し、23年ぶりの安値を記録した。
石油メジャー最大手の同社は、13年ぶりに増配を取りやめ、自社株買いを停止した。さらに、第1四半期決算では32年ぶりの赤字となり、2020年の設備投資予算を30%削減し230億ドルとすることを発表した。
このような措置を発表した後、同社が配当を維持できるか否かに注目が集まっている。多くの石油メジャーが減配に踏み切ったことから、この懸念はさらに高まっている。
ロイヤル・ダッチ・シェル(NYSE:RDSa)は第2次世界大戦ぶりに減配し、配当額は66%減の0.16ドルとなった。シュルンベルジェ(NYSE:SLB)は、配当額を75%削減し、40年ぶりの減配となった。
一方、ハリバートン(NYSE:HAL)は減配を見送ったものの、必要に応じて減配を実施する姿勢を示している。
格下げ
S&P500は3月16日、エクソンの格付けをAA+からAAに格下げし、「キャッシュフローと財務レバレッジを解決しなければ今後も格下げする可能性がある」と述べた。
今年の配当金である147億ドルを支払うためには、原油価格が1バレルあたり約77ドルである必要がある。RBCキャピタル・マーケッツによると、これは石油メジャーの中で最も高い損益分岐点である。
一方、同社の負債は500億ドルで、昨年の利益は10年前の約半分となっている。このような厳しい状況下において、配当が同社の足枷になっているようだ。同社CEOのダレン・ウッズ氏によると、同社が高い配当を支払い続ける理由は、株主の約70%が個人投資家と長期投資家で構成されているからとのこと。
原油市場の動向を窺うと、各国で経済活動が再開されつつあり、原油需要が徐々に増加し始めている。そのため、同社は最悪の時期を脱した可能性がある。
実際、中国における原油需要は、北京がロックダウンされる前の水準まで反発している。中国は米国に次ぐ世界第2位の原油消費国であるため、中国の回復は原油市場を下支えするだろう。
1か月前にマイナスへ転じたWTI原油は20日、1バレルあたり33ドルを上回った。この反発を受け、同株も反発し、3月の安値である31ドルから40%以上値を上げた。同社は今後も高い配当利回りを維持し続けるだろう。
総括
我々の見解では、エクソンは負債を増やしてでも配当を支払い続けるだろう。記録的な低金利は、同社の積極的な株主還元の追い風となるだろう。
しかし、同社は同業他社と比較して、長期的に魅力的な銘柄とは言えない。同社は石油、天然ガス、液化天然ガスの供給過剰など、逆風に最もさらされている。この状況は今後も変わることはないと見られる。