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天然ガスが急落、欧州は危機の収拾に追われ、米国は春の到来間近

発行済 2022-03-10 20:59
更新済 2020-09-02 15:05

米国では気温が上がり、春の雪解けが徐々に進んでいる。欧州のエネルギー危機も、ウクライナ侵攻から2週間が経過し、緊迫感が低下しているように感じられる。米国では健全なレベルを下回る貯蔵量の減少と米国内では家庭での旺盛な液化天然ガス需要がみられているにもかかわらず、天然ガス価格は低下している。

米国では、徐々に春へと入っていく中で寒波による影響も薄れると予想されていることなどから、天然ガス先物相場は3日連続で下落し、週次はほぼ2桁のマイナスとなる見込みである。

天然ガス 日次チャート

関係筋によると、水曜日の気温の変化により、今後2週間の需要予測は50億立方フィート(bcf)ほど減少し、火曜日の減少予測の35bcfから更に加速した。

一方、欧州の天然ガス価格の急落は、ウクライナ侵攻以来、欧州と米国間にてみられているショート筋により、米国の天然ガス価格にも重しがかかっている。

ドイツのオラフ・ショルツ首相が、同国はロシアの天然ガス輸入禁止措置を取らないと断言した後、米国市場では月曜日に天然ガス価格は4%低下した。この発言により、欧州の主要取引所であるオランダのTTFガス先物は68ドルから50ドルに急落し、欧州圏のエネルギー供給の安全性に対する市場の恐怖プレミアムが一部消滅した。

ヒューストンに拠点を置くエネルギー・コンサルタント会社のGelber & Associateは2日、天然ガスのエクスポージャーを持つ顧客に電子メールを送り、TTFにはまだ上昇リスクが残っていると警告していた。ただし、今後の動きの多くは、ロシアと欧州の主要プレイヤーの地政学的行動と天候の変化に依存するとみられる。

「米国の天然ガス価格の上昇リスクは、米国の輸出能力の限界から依然として限定的だが、下降リスクは全く異なる」と、同社のアナリスト、Dan Myers氏がメールの中で述べている(Investing.comにおける取材)。

「欧州における天然ガス価格の下落は、米国市場にある程度の影響を与える可能性がある。欧州での価格の下方へのシフトは、価格の上昇よりも、米国の液化天然ガスの生産能力の稼働に影響するからだ。

3月における需要の低下と、原油価格の上昇から予想される天然ガス生産の増加を市場が織り込んでいるため、米国の天然ガス価格は短期的には引き続き下落リスクは高い」と述べている。

西側諸国によるロシアへの徹底的な制裁措置が、間接的にロシアの原油輸出に打撃を与えると分析されたことを受け、米国の原油指標West Texas Intermediate(WTI)は3月4日までの週で26%上昇した。WTIは今週初め、1バレル130ドルを超える14年ぶりの高値まで上昇を続け、水曜日にはウクライナ戦争勃発後初の2桁台まで急落した。

Gelber社は、木曜日に予定されている米国エネルギー省情報局による天然ガスの週次貯蔵量の発表を前に、注意を喚起した。

天然ガス 貯蔵量

出所:Gelber & Associates

Investing.comが追跡しているアナリストは、3月4日に終了した週の引出量は117bcfと予想しており、前年同期の引出量は59bcf、5年間(2017-2021)の平均引出量は89bcfであった。

電力会社の週次ガス消費量が100bcfを超えるのは9週連続となり、そのうち4週は200bcfを超える引出量となっている。

2月25日までの週では、電力会社が123bcfのガスを貯蔵所から引き出された。

アナリストのコンセンサス予想が的中した場合、3月4日に終了した週の在庫は1兆5260億立方フィート(tcf)に減少し、5年平均より約15.6%、前年同月比では15.2%減少することになる。

Refinitivのデータによると、先週の暖房度日数(HDD)は146日で、過去30年の平年値である154日に対し、平年より穏やかな気候であったことがわかった。

HDDとは、1日の平均気温が華氏65度(摂氏18度)以下になった日数のことで、家庭や企業の暖房需要を予測するために使われる。

Gelber社のMyersによると、3月末までに寒さが和らぐと、貯蔵庫からの引出量は減少すると予想されるとのことだ。

「今年最初の補充は、このまま天気が穏やかになっていく場合、早ければ3月25日に行われる可能性が非常に高い」と同氏はメールに書いている。

Rystad Energy社のガス市場担当バイス・プレジデントであるSindre Knutsson氏も同様の見解を示している。

「市場は今、冬のシーズンの終わりを見据えている。」Knutsson氏は、業界ポータルサイトのnaturalgasintel.comに掲載されたコメントの中で、「予報では、気温は平年よりかなり高いとされている」とみている。

Bespoke Weather Servicesは、米国が自国内に対して行う供給は十分であり、市場は春の行楽日和に向かっているため、暖房需要が急速に減少することはほぼ確実であると述べている。

「天然ガス市場が他のエネルギー関連市場の動向からようやく切り離された。もっと早くそうなるべきだったが、すべての市場に影響を与える大きなニュースがあるときに、独立した動きになるタイミングを予測するのは常に難しい」とBespoke社はコメントしている。

Refinitivのデータによると、米国の液化天然ガス輸出施設に流れる天然ガス量は、2月の12.43bcf/日(bcfd)、1月の記録的な12.44bcfdから3月は足元までで12.59bcfdに増加した。

ロシアとウクライナの紛争を背景に、世界の天然ガス価格が米国先物の12倍で取引される中、米国は過去最高の液化天然ガスの輸出量を記録している。

免責事項:Barani Krishnanは、あらゆる市場の分析に多様性を持たせるために、自身以外の様々な見解を用いている。中立性を保つため、時には逆張りの見解や市場の変数を提示することもある。同氏は執筆しているコモディティおよび証券のポジションを保有していない。

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