6週間前に、パラジウムは、ロシアのウクライナ侵攻によるプレミアムが剥落し、3月7日に記録した最高値3417ドルから最大で45%下落すると書いたが、自動車触媒用に使われるこの金属の世界供給は書面上では依然としてタイトである。
火曜日のニューヨークCOMEX市場で、パラジウムは1オンス2,178.50ドルと、ピークから36%下落した。実際、3月16日付の記事を投稿した後、パラジウムは3月29日に2,025.50ドルまで下落した。それ自体高値から41%の下落であり、ここで重要な疑問が生じる。パラジウムは反発の準備が出来ているのか、それとも下落基調を続けるのか、ということだ。
その答えは、多くのコモディティがそうであるように、供給不足に直面しても、パラジウムのチャートとファンダメンタルズの違いから、二面性を持っていると言わざるをえない。
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skcharting.comのチーフ・テクニカル・ストラテジスト、Sunil Kumar Dixit氏は、テクニカル面では、パラジウムは下降線をたどり、反発する可能性があると指摘した。
この45%の下落を最初に予想した同氏は、「過去最高値以来みられる弱気の勢いは衰えており、1900ドルを試し、2025ドル以上で反発すれば、さらに蓋然性が高まる」と話す。
「また、2,025ドル以上を維持すれば、2,270ドルから2,330ドルに及ぶレジスタンス群を再び試し、2,530ドルまで上昇することが期待できる」とも付け加えた。
同氏は、パラジウムの上昇幅が急速に縮小したため、3,417ドルの記録的高値は短命であったと指摘する。
今のところ、パラジウムは3月の安値2,025ドルを維持する弱気トレンドからきれいに脱却していない、という。
「3月の安値2025ドルを割り込むと、200週単純移動平均の1925ドルと50ヶ月指数移動平均の1915ドルの下値が限定的になる可能性がある。」
「このレベルからの大きな下げはないようで、もしかしたら1900ドル付近への限定的な調整と安値からの反発、近いうちに2530ドルを再び試すかもしれない。」
しかし、ファンダメンタルズはこれとは異なることを示唆している。
月曜日に、中国ではコロナ禍によって主要都市でのロックダウンが今後の需要動向に対して悪影響を及ぼしているため、パラジウムは約13%下落した。
1ヶ月に及ぶ上海の封鎖と、その他の新たなパンデミック対策が世界第2位の経済大国である中国に与える影響への懸念が高まる中、ほとんどのコモディティは高値から下落した。
米連邦準備制度理事会(FRB)は次の利上げ幅を従来の2倍にする可能性を示唆しており(3月の25bpsに対して5月は50bpsの利上げが見込まれている)、投資家が安心できる理由は少なくなっている。
TD証券の商品戦略責任者Bart Melek氏は、ロイターへのコメントで、「パラジウムに対する不安の多くは、中国経済の潜在的な問題に起因している」と述べた。
「このことは、ロシアの制裁に関連する潜在的な供給不足懸念の多くを相殺している」という。
ロシアのNornickelは、第1四半期のパラジウム生産量が前年同期比で減少したと発表した。
また、パラジウムは貴金属グループの中で最も変動が大きく、中国の経済指標によって、投資家が同国の自動車需要を見極めようとして、絶えずパラジウムへの動向は揺り動いている。パラジウムはガソリン・エンジンの触媒コンバーターに使用されている。
RJO Futuresのシニア・マーケット・ストラテジスト、Peter Mooses氏は、金塊ディーラーKitcoが運営するポータル・サイトKitco Newsで、「パラジウムは、製造業のデータに影響を受けるため、中国のロックダウンに過敏になっている」とコメントしている。
そして、ロックダウンによるさらなる経済的影響に加えて、中国の成長はすでに減速しており、新たな刺激策もほとんど期待できない、と同氏は付け加えている。
TD証券は、「コモディティ需要は、2020年春以来最も厳しいロックダウンによる中国の成長不安や、コロナ禍の断続的な感染波、直近はウクライナ戦争によって引き起こされた著しい備蓄ニーズとの綱引きの中で蝕まれている」とみている。
「しかし、北京にて感染者数が急上昇しているため、上海に続いて厳格なロックダウンを行う可能性があるという懸念が浮上し、現在、成長懸念が強まっている」という。
「中国ではさらなるロックダウンの可能性があり、ロシア・ウクライナ情勢も依然として燻っているため、先行き不透明感が強い。米国ではさらに先行きがみえない。パラジウムや銅といった金属(製造業向け金属)は、建設業や製造業の軟調な成長見通しから、さらに大きな打撃を受けている。全般的に将来の見通しは暗い。」
MKS PAMPの金属ストラテジスト、Nicky Shiels氏もKitcoのサイトでコメントしているように、市場は中国のゼロ・コロナ政策によるロックダウンによる影響を心配しているようだ。
「中国の上海でのロックダウンは4週目に入り、北京での感染者数が増加しているため、都市封鎖は北京にも広がる懸念があるため、需要懸念は高まり続けている。中国のゼロ・コロナ政策の徹底ぶりは、(サプライ・チェーンの問題が続くため)成長とインフレの両方に悪影響を及ぼす。経済よりイデオロギーが優先されるのは危険であり、特に中国の2大都市・最富裕層の購買力を痛める可能性がある」と同氏は月曜日に書いている。
コンサルタント会社Cox Automotiveのチーフ・エコノミスト、Jonathan Smoke氏は、4月の米国での自動車需要の遅れは明らかだと指摘する。
Smoke氏は、火曜日に発表した業界最新情報の中で、米国の二大自動車販売サイトについて、「(購買活動は)3月から減少し、AutotraderとKelly Blue Bookの両方で前年同期比で減少した」と述べている。
免責事項:Barani Krishnan氏は、あらゆる市場の分析に多様性を持たせるために、自身の見解以外の様々な見解を用いています。中立性を保つため、時には逆張りの見解や市場の変動要因を提示することもある。また、執筆しているコモディティおよび証券のポジションは保有していない。