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週次コモディティ動向:景気後退への懸念が原油を下落させ、金は安定的に推移する可能性

発行済 2022-06-20 20:23
更新済 2020-09-02 15:05

米国の景気後退懸念とテクニカルによる売りが、今週100ドルを割るまで原油に下落圧力をかけ続ける可能性があり、その後買いが入り、原油価格は下落分を取り戻すかもしれない。

WTI先物 日次チャート

先週、米連邦準備制度理事会(FRB)は過去28年間で最大となる75bps(0.75%)の利上げの実施を発表して以来、軟調なマクロ経済データと過去40年間で最悪のインフレに対応するめの超大型金融引締めが重なっていることから、市場では米国が不況に向かっていると確信を強めた。

FRBのパウエル議長は今週議会に戻り、FRBが行っていることの理由と、それがなぜ景気後退ではなく、経済の「軟着陸」になるかもしれないかを説明する予定だ。しかし、パウエル議長の言葉を真に受ける人はほとんどいないかもしれない。

オンライン取引プラットフォームOANDAでアジア太平洋地域の調査を担当するジェフリー・ハレー氏は、「経済データや資産クラス全体の値動きを通して、景気後退の風がより大きく吹き始めると、『R』という言葉がますます多く使われるようになる」と指摘する。

「原油価格も不況ノイズの重圧で下落に転じた。上昇の最も望ましい支援はさらなる上昇であるという典型的なケースとなるかもしれない。」

原油価格は先週、4月以来の9%もの急落を記録した。工業生産自体は改善しているものの、サプライ・チェーンの停滞や生産コストの上昇を背景に、米国の工場生産高が5カ月連続で減少したことを受け、原油業界はこの警告を真剣に受け止めているようにみえる。

月曜日のアジア取引では、大きな水準ではなかったが原油は反発した。

米国産原油の指標となるニューヨーク取引で取引されるウエスト・テキサス・インターミディエイト(WTI)は、シンガポール時間午後2時(米国東部時間午前2時)までに70セント(0.7%)上昇し、1バレル108.69ドルとなった。WTIは先週11ドル強の下落を記録し、8週間ぶりの大幅な下げ幅となった。

世界的な原油指標であるロンドン取引所のブレント原油は、69セント(0.6%)高の113.81ドルだった。ブレント原油は先週、約9ドル下落し、ここ2カ月で最大の下げ幅となった。

先週の暴落直前、WTIは123.18ドルと、ロシアのウクライナ侵攻後に130ドル近くまで上昇した3月以来の高値に急騰した。ブレント原油は、3月に140ドル近くまで上昇した後、125.16ドルに達し、それ自体が14年ぶりの高値となった。

この値動きは、OANDAのハレー氏の言葉を裏付けるかのようだ。価格の上昇は、すでに高騰している原油の価格を下支えしている可能性がある。

この暴落に先立ち、WTIとブレント原油が過去8週間でそれぞれ約20ドル上昇したことから、いずれもひどく買われすぎていると、テクニカル・アナリストは数週間前から警告していた。

原油は今後、さらに圧力を受ける可能性があるという。

skcharting.comのチーフ・テクニカル・ストラテジスト、Sunil Kumar Dixit氏は「先週の値動きで、前週に形成されたWTIの弱気のDOJIパターンを確認した」という。

「WTIは123.66ドルから108.25ドルまで15ドルの急落がみられた」と述べ、週次チャートで54/65、日次チャートで8/30というストキャスティクス数値は、米国産原油の潜在的変動性と弱気ムードを補強するものだと付け加えた。

同氏は、米国産原油の100ドルサポートを試す可能性は否定できないとみている。

また、50日指数移動平均の109.83ドルを下回ったことも弱気のサインとなった。

反面、WTIは週足ミドル・ボリンジャー・バンドの106ドルから反発をみせ、113ドル-116ドル-119ドルレベルまで再び試す可能性があるという。

「もしそうなれば、売り手は再び、200日単純移動平均線が101ドルをターゲットにした次の下降足への叩き売りを再開する可能性がある」と予想する。

パウエル議長が今週水曜日と木曜日に行う議会での証言に続いて、今週は他のFRB高官の演説も控えている。市場は7月のFOMC会合で予想される利上げの規模を見極めようとしており、発言内容に注目が集まる。

パウエル議長は、1981年以来の高水準にあるインフレを抑制するというFRBのコミットメントを改めて表明する見通しだ。FRBは金曜日に、インフレ対策へのコミットメントは「無条件」であると述べた。

エネルギー価格を押し上げているウクライナ戦争のようなインフレ上昇の要因のすべてをFRBがコントロールすることはできないと述べている。

市場関係者は、FRBの積極的な利上げ政策は景気を後退させるリスクがあると懸念している。経済成長ペースが鈍化の兆候を示し、S&P500はすでに弱気相場入りしているため、パウエル議長は経済と市場にあまり大きな混乱を招くことなくインフレを抑制する方法について詳細な説明を迫られるかもしれない。

ウクライナ侵攻とそれに続く欧米のエネルギー輸出国ロシアへの経済制裁は、世界的な原油供給の逼迫を悪化させているが、今年の原油高は多くの貧しい消費国の手の届かないところまで来ていると、アナリストは指摘する。

米国では、原油価格の上昇による国民の負担を最もよく表しているのはガソリン価格であり、今月は史上初めて1ガロン5ドルを上回った。米国自動車協会によると、米国の多く、特にカリフォルニアなど西海岸の州では、ガソリン価格は1ガロン6ドル近くで販売されているという。カリフォルニア州ではディーゼルはさらに高く、1ガロン7ドルを超えていた。

住宅ローン金利が上昇を続ける中、今週火曜日に発表される米国の中古住宅販売件数は、5月に減速を示す可能性がある。また金曜日にも新築住宅販売件数を発表する予定で、市場は5月の16.6%の急落の後、回復の兆しを探っているところだ。

先週、労働市場の冷え込みが指摘されたものの、依然として需給は逼迫していなか、新規失業保険申請件数が木曜日に発表される予定だ。また、製造業サービス業の経済活動の速報値も木曜日に発表される予定である。

金価格は、ニューヨークのCOMEXの8月の前月限金先物は、シンガポール時間午後2時までに4.80ドル(0.3%)上昇し、1オンス=1845.40ドルとなった。

金曜日のCOMEXの8月限金は0.5%下落し、週明けは1.9%下落している。

金先物 日次チャート

Dixit氏は、先週1週間の金の値動きについて、2000ドルを突破できなかった4月限のコメックス高値1998ドルの後に形成された75ドルの長方形の上昇チャネルをまたいでいることを指摘した。

「このような上昇チャネルは、しばしば弱気トレンドを示すものであり、サポートが決定的に破られた場合、再び下落する可能性がある」と述べた。

また、週足では、50日指数移動平均(1851ドル)と100日単純移動平均(1845ドル)を下回り、弱気相場が継続していることを示唆している。

同氏は、「来週以降、金は次の動きをみつける前に、1830ドルから1850ドルのニュートラル・ゾーンで始まる可能性が高い」と予想する。「1,830~1,840ドルを上回る動きが持続すれば、短期的に1,850~1,860ドルまで反発する可能性があり、次の抵抗線である1,878ドルをクリアする必要がある」とみている。

しかし、1,850-1,860ドルでの拒絶は、1,830-1,820ドルを再び試す方向に金を押し上げ、1,805ドルのチャネル・サポートに向けて伸びる可能性があるという。

「1,878ドルまたは1,805ドルを決定的に突破した場合、突破した方向にさらに30ドルから75ドルの動きが始まり、トリガーによっては、ストレートまたは段階的な動きになる」と付け加えた。

免責事項:Barani Krishnan氏は、あらゆる市場の分析に多様性を持たせるために、自身以外の様々な見解を用いている。中立性を保つため、時には逆張りの見解や市場の変動要因を提示することもある。同氏は、執筆しているコモディティおよび証券のポジションを保有していない。

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