ドル高と円安と米国発のノイズ

ドル円は9月21日週、堅調に推移した。前週はFRBの利上げとタカ派に傾斜したFOMCの姿勢を受けて156円台まで上昇し、日銀が予想通り利上げを決定した後も、2名の反対票やタカ派になりきれなかった植田総裁の会見が材料視され、158円台まで上昇していた。その日の夜のレートチェックで156円台まで反落したものの、シルバーウィーク期間中も米長期金利の上昇を受けたドル高と円安の地合いを引き継ぎ、24日には159円03銭まで上昇した。もっとも、25日昼過ぎ、片山財務大臣が日米首脳会談でトランプ大統領が円安に懸念を示したと明かすと、ドル円は軟化し、引けにかけて157円台まで続落して越週した。

日銀の利上げを巡っては「負のフィードバック」が働いている。日銀が円安への警戒を強めて利上げスタンスを強めると円高が進むが、それによって利上げの必要性が低下し、利上げ姿勢が和らぐと再び円安に戻る流れである。実際、9月2日の植田総裁や高田審議委員のタカ派的な発言を受けてドル円は152円台まで下落したが、利上げ後の記者会見で総裁が「緩和度合いは縮まっている」「長期・超長期は引き締まりつつある」などと繰り返すと159円台まで反発した。総裁は今後の利上げペースとして原油価格、AI投資、為替相場の3点を挙げたが、一連の値動きと発言に照らせば最も警戒しているのは円安だろう。12月利上げの有無も為替レートに強く影響されるとみられ、160円を超えていれば利上げの可能性は非常に高い一方、155円を割り込んでいれば追加利上げは年明け以降に持ち越されると予想する。

もっとも、日銀が利上げをしても円高には動きにくい。市場は日銀の12月利上げを完全に織り込む一方、他の主要中銀にはそれ以上の利上げを織り込んでいる。加えて、利上げ後も政策金利はインフレ率を下回る見込みで、短期の実質金利はマイナスのまま、すなわち事実上の金融緩和が続くことになる。投機筋の持ち高も、9月15日時点ではレバレッジドファンド勢まで円を買い越していたが、22日時点では7,423枚と前週の23,170枚から縮小した。

片山大臣は24日に協調介入の可能性にも言及したが、米国がドル売り介入に参加する可能性は極めて低い。ベッセント財務長官が7月31日の協調介入の理由に挙げた「円安」や「アジア通貨安への波及」はG7で共有されていないとみられ、過去の協調介入で必ず発出されてきた共同声明も今回は出ていない。経常赤字を外国人投資家の米国債投資に依存する米国にとってドル相場の安定は極めて重要であり、足元で財務省は長期金利の上昇への警戒も強めている。協調介入が一日限りであったという経験則もある。むしろ警戒すべきは米国発のノイズ、すなわち口先介入であり、ベッセント長官が再び執拗に日本に利上げを求める可能性が高い。

来週は30日の個人消費支出物価指数(8月分)が焦点となる。クリーブランド地区連銀の推計は8月から9月にかけてのインフレ率上昇を示唆しており、市場が既に7割程度織り込む10月利上げの観測がさらに高まれば、ドルは続伸しそうだ。タカ派になりきれなかった日銀が円安要因、タカ派に傾きつつあるFRBがドル高要因となっており、160円大台回復も視野に入る。日本の単独介入や米国からの口先介入が見込まれるため、円安主導で上昇した場合は高値圏での波乱に注意を要する一方、ドル高主導であれば160円は単なる通過点となる点に留意すべきだ。

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