「安値」はどこまで下がるのか?
米国のデータ、特に雇用に関して、前向きな結果が出れば、FRBの資産買い入れ刺激策は、2014年半ばに終了する可能性があるとするバーナンキ議長による発言によって引き起こされた市場の大暴落はまだ終わっていない。瀕死の状態にある金は、昨日、1日での下げ幅としては2日間の4月の大暴落以来最も大幅な下落を記録し、昨日の朝から5.4%下落した。米国株も下げ、S&P 500は2.5%下落し、11月以来維持してきた右肩上がりのトレンドラインを突破し、50日移動平均を下回り、3か月超で最も大きな取引高を記録して安値で閉じた。一方、先物の取引高は、20か月ぶりの高水準となった。原油も下落し、昨日の朝以来、WTIは3.1%、ブレントは3.3%下げた。新興市場通貨は続落で、ブラジリアンレアルが3.48%、メキシカンペソが3.17%、南アフリカランドが1.99%の下落となった。発展途上国の高利回り通貨も下落し、対USDでオーストラリアドルは2.53%、ニュージーランドドルは2.27%下げた。中国の景気鈍化がこの傷を深めた。ただし、中国の人民銀行による市場介入により、中国の財政危機は緩和されたようだ。
EURはどうにか持ちこたえ、昨日の朝以来、USDの1.18%の上昇よりは小幅な1.04%(sic)の下げに留まった。6月のユーロ圏におけるPMI速報値が予想よりも全般的に良好であったことに加え、予想よりも大幅に縮小したドイツの製造業PMIが、サービス業における予想外の拡大によって相殺されたことから、EUR/USDの下落のペースは次第に弱まった。その後、EURは、米国の失業保険申請件数が、35万4千件と、5週平均を5千人上回り、予想よりも大幅な増加を示したことをうまく利用することができた。同時に発表されたコンファレンス・ボードの先行指標が0.2%の縮小予想に対し、0.1%の上昇を示したが、4月の0.8%を大幅に下回ったことや、ユーロ圏の消費者信頼感指数が22か月ぶりの高水準となったことから、1.3160のサポートからの回復が生じた。これは、15か月ぶりの高水準に匹敵する水準を示した6月のフィラデルフィア連銀製造業指数と、年間518万件と28カ月ぶりの高水準となった中古住宅販売が同時に発表されたにも拘わらず、生じたことである。しかし、住宅ローンを含む借入レートは、FRBが刺激策の規模を縮小するのではないかとの憶測から、過去6週間急騰していることから、住宅ローンの申し込みが減少し、これが住宅価格の上昇への足かせとなっていることからも示されているとおり、住宅市場は鈍化する運命にある。鈍化が住宅価格の下落となって現れれば、そのときは、株価の下落と給与税の増税とも相俟って、消費者心理に深刻な影響を及ぼす可能性は高く、消費者の資産価値効果によって理論化されているとおり、財産の知覚価値の下落から、人々は支出を抑える可能性がある。FRBの緩和策が狙っていることとは裏腹にこうしたことが起こるだろう。このため、暗いシナリオが動きだせば、実体介入あるいは口先介入の段階に入る可能性は高いだろう。
本日、経済データという意味では、米国から発表されるデータはなく、以外にも閑散とした一日である。カナダは、5月のCPIを発表する予定で、総合インフレ率の前年比は、0.4%から0.9%へ、またコアCPIも1.1%から1.2%へと上昇を示すだろう。前月比CPIは、先月発表された0.2%のデフレから反発するとみられ、0.4%の物価上昇を示すだろう。英国では、5月の公的部門の純借入額が、4月の80億3500ポンドを50%上回る137億5000ポンドを記録するとみられ、11月以来の最高水準となるだろう。ユーロ圏では、季節調整後の4月の経常収支が発表される予定であるが、予想は用意されていない。ギリシャでは、連立政権を成す党間で意見の不一致が見られることから、近く選挙が行われる可能性が高まっており、周辺諸国のリスクが再び前面に回帰するなか、ECOFINも開催される予定で、各国財務相は、銀行の再資本化の必要性が高いことについて議論するだろう。
マーケット
EUR/USD
• 昨日、EUR/USDは1.3160でサポートを見出した。現在のサポートは、フィボナッチ水準である1.3230にあり、この水準を下回るサポートは、1.3200と1.3160に現れ、注目すべきフィボナッチ・サポートは1.3115に現れるだろう。
USD/JPY
• USD/JPYは、98.25のレジスタンスから戻した。本日、レジスタンスは、11月~5月のラリーの23.6%リトレースメント水準である97.00~98.15の重要な領域に現れる可能性が高い。さらに、集中するレジスタンスは、98.85、50日移動平均である99.15、99.35に現れるだろう。サポートは、97.05、96.40、95.90に見られる。
GBP/USD
• GBP/USDは、1.5420に見出される重複するフィボナッチ水準から反発し、その後、サポートが、次の注目すべきフィボナッチ水準が見られた1.5500に現れた。レジスタンスは1.5550~1.5570の領域に見られ、その後のレジスタンスは1.5610に現れるだろう。1.5420のサポートを突破すれば、次のサポートは50日移動平均である1.5370に現れ、その後、サポートは、1.5345と1.5315に集中するだろう。
金
• 金は、1269ドルの安値に到達したが、その後反発し、1285ドルに見出される、2001年~2011年の10年のラリーの注目すべき38.2%フィボナッチ水準を上回る水準にまで上昇した。現在の安値を下回る弱いサポートは、これを大幅に下回る1228ドルにある。1285ドルを上回るレジスタンスは1300ドルと1330ドルに現れる。
原油
• WTIは、全てのサポートを突破し、過去のトレンドラインとフィボナッチ・サポートが見られる94.50ドルの安値で閉じた。その後、重要なサポートが、50日移動平均である94.05ドルに現れ、93.50ドルを下方突破すれば、92.35ドルに向けた下方突破が生じる可能性がある。レジスタンスは96.65ドルと96.10ドルにある。
通貨レートベンチマーク - 今日の勝者と敗者
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