今度はECBの番だ:
数日間、FRBが何をしようとしているのかということが焦点だったが、昨日、焦点はECBに移行した。ECBの専務理事で、金融市場およびECBによる金融政策の遂行を担当するブノワ・クーレ氏が、ECBのスタンスは、必要性がある限り緩和姿勢を続けるだろうと発言したうえ、ECBは、標準的ではない政策手法に関しても「虚心坦懐」に臨むと語ったのである。これは、ECBのドラギ総裁の発言と関係がある。彼は、「統合された世界経済において、その他地域の不確実性に伴って、金融政策スタンスは変わる可能性を秘めていることから」、必要とあらば、ECBが問題のある国の債券を買い上げることを約束する債券買い入れプログラム(OMT)は、「今やますます重要となっている」と述べた。言い換えれば、FRBが量的緩和の縮小を実行する一方で、ECBは、ユーロ圏の景気回復軌道を維持する必要があれば、長期金利を引き下げる用意があるということだ。EUR/USDと、2年物ブンズと米国債間の実質スプレッドとの相関が比較的良好であることを考えれば、このことは、EUR/USDが今後低下することを示唆している。EURは、次のECB理事会を前にして、一定の下方圧力に晒される可能性がある。
同国の中央銀行である中国人民銀行(PBOC)が、金融市場における危機を緩和するために介入したことを受け、昨日、中国崩壊の脅威は若干後退し、上海の株はほぼ横ばいで閉じた。これが、最近のリスクオフ行動からの逆転を後押しし、オーバーナイトで最大の上げ幅を記録した通貨は、最近最も大きく下げていた通貨、すなわちSEK、NOK、AUDなどであった。しかし、本日は、PBOCが、金融市場の安定性を守るための手法を利用すると述べた後でさえ、上海市場が再び下落していることら、中国内の人がすべて安心したわけではないことが伺える。
本日発表される主な経済統計は見当たらず、予定されているのは、フランスと米国のGDP確報値のみである。
マーケット
EUR/USD
• ECB理事会メンバーによるハト派的な発言に加え、米国の5月の耐久財受注指数が予想よりもかなり良かったことにより、EUR/USDはレジスタンスから戻した。本日、MBA住宅ローン申し込み件数の発表を控え、S&P/ケースシラー住宅価格指数と、大半の新築住宅販売が、リーマンショック後に比べ上昇していることから、米国の住宅市場の回復が裏付けられ、コンファレンス・ボード消費者信頼感指数は5年半ぶりの高水準にまで上昇した。このデータに加え、市場参加者が、量的緩和の縮小を予想するほどの米国の回復の兆候により、EUR/USDは、注目すべき、フィボナッチ・サポートと50日および200日移動平均サポートである1.3075まで推移した。
• 1.3075の突破後は、1.2875まで続いている過去の価格動向が集中する領域に突入した。フィボナッチ・レジスタンスは、1.3075と1.3115に現れ、弱いサポートは、1.3055、1.3030、1.3005、1.2980に存在する。
USD/JPY
• 米国のデータが全般的に好調なことと、PBOCによる鎮静化を試みる発言によって、中国の懸念が縮小したことから、USD/JPYは97.05のサポートから反発した。しかし、上海総合指数が、本日1.5%超下げ、6月の下げ幅は16%となる一方、1950にある4年半ぶりに低いサポートを下方突破したことから、安全資産への逃避が見られたため、98.20のトレンドライン・レジスタンスからのリトレースメントが生じた。
• フィボナッチ97.90を上回るレジスタンスは、98.20に、その後は98.8に現れ、そして50日移動平均も見られる99.15-99.35領域に突入するだろう。サポートは試された97.05水準に、またその後は96.40に現れ、価格上昇と右肩下がりのストキャスティック・オシレーターとの間で、乖離が生じる可能性がある
USD/CAD
• USD/CADは3年越しのトライアングル・フォーメーションからの突破後、引き続き上昇しており、現在、ほぼ2年ぶりの高水準を試しつつあり、スパイク・レジスタンスは1.0650にある。
• トライアングル・ブレイクアウトによって設定されたより長期の価格目標は、1.13であり、これは、現在の水準からはかけ離れている。1.0470は試されたサポート水準で、トレンドライン・サポートは1.0415にある。
金
• 米国の良好なデータの発表により、FRBによる刺激策が2014年半ばまでに終了する可能性が高まっていることから、金は下落へと動いた。最近の安値である1269ドルの突破が、下方突破の引き金となり、サポートは弱い1244ドル水準にある。
• 1269ドルのかつてのサポートは、レジスタンスに転じる可能性があり、その後のレジスタンスは1285ドル~1289ドル領域に現れるだろう。1244ドルを下回るサポートは、かつて試された1228ドル水準に現れ、重要なサポートは1160ドルに現れるだろう。
原油
• 米国の耐久財受注指数が予想よりも良かったことを受け、USDが上昇したため、WTIは96.05のレジスタンスから戻し、API原油備蓄は若干の減少にとどまったため、価格への影響はなかった。本日発表されるデータは、DOE備蓄における175万バレルの減少を示すと予想されるものの、WTIは、94.50ドルのフィボナッチ・サポートを下方突破するだろう。次のサポートは、94.05ドル、93.50ドル、92.65ドルに現れ、かつてのサポート水準である95.65ドルと96.05ドルに現れるだろう。
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