世界の株式市場が悲観的になり、リスク回避が始まるなか、昨晩、USDはまちまちなパフォーマンスとなった。成長敏感通貨がUSDに対して下落する一方、JPYは上昇した。SEKおよびNZDは最も大きく下落した。しかし、CADは、前月の低下から一転すると予想されている本日の小売り売上高の発表を控え、この流れに逆らった動きとなった。ブラックベリー社買収案も、CADを押し上げる要因となった可能性がある。USDは大半の新興市場通貨に対して上昇したが、MXNとBRLはどうにか上昇した。
USDは、先週のFRBショックを受けた安値に既に達したとみられる。たとえば、昨日、ユーロ圏の総合PMI指数が予想よりも良かったにも拘わらず、EUR/USDが1.3500を下回る水準にまで戻したことは注目に値する。しかし、米国債利回りは、FRBのニュースの直前に比べ15bp強下落している(9月初旬に比べ30bp下落)。金利の低下は、株式市場と成長敏感通貨を支えるだろう。しかし、最近のFOMC会議後に発言しているあらゆるFRB関係者が、景気に対してあらゆる見解を示している。量的緩和の縮小の開始に関しては確かなことは言えず、不透明であるというのがその主な結論のようである。その上、米国の財政に関する討論は最後まで予断を許さないため、USDの急落の可能性も残されている。ニューヨーク連銀総裁のウィリアム・ダドリー氏は、昨日、はっきりとこう発言した。米国議会が政府の機能停止を回避し、国の債務上限を引き上げようとしているため、財政的な不確実性が「非常に大きくなっている」と。もしそのようなことになれば、膨大なリスク回避取引が生じることは疑いのないところだろう。したがって、明らかなトレンドの欠如が生じる。私は、いつものように財政問題は解決され、さしあたり成長取引が勝つとみている。そうなれば、対USDや対JPYでのAUDおよびNZDの買い、および、USD/SEKやUSD/CADの売りが有利となるだろう。
本日は、中央銀行の発言が目白押しである。ECBから5名、イングランド銀行から4名、FRBから2名、カナダ銀行から1名の発言が予定されている。最近のFRBの発言が何等かの指針になるとすれば、彼らは互いに反目し合っているため、かなりボラティリティーは高くなる可能性がある。データに関しては、本日、欧州の主なイベントは、9月のIfo指数である。現況評価と予測項目のいずれもが上昇すると予想され、これがEUR/USDを支持する可能性がある。米国では、ケース/シラーとフェデラル・ハウジング・ファイナンス・エイジェンシーの住宅価格指数が、いずれも住宅価格が前月と同程度のペースで上昇していることを示すと予想される。金利の上昇が住宅市場に悪影響を及ぼしていないことを示すとみられるため、USDにとってはプラス材料だろう。一方、USDに対してマイナスな指数もいくつかある。リッチモンド連銀の製造業指数とコンファレンス・ボード消費者信頼感指数は、いずれも低下すると予想される。カナダでは、7月の小売売上高が前月から一転して上昇を示すと予想される。
マーケット
EUR/USD
• EUR/USDは下落し、1.3512水準(昨日のサポート)をどうにか下方突破し、昨日の分析で当社のオシレーターが示した弱含みが裏付けられた。現在同ペアは、20期間移動平均を試しつつあり、これを下方にクロスすれば、青色の上昇トレンドラインに向けた戻しの継続、あるいは、重要な水準である1.3400(S1)に向けた下落を示唆することになるだろう。しかし、レートは、上昇トレンドラインを上回って推移しており、移動平均が依然として強気なクロスを示していることから、私は、レートは依然として上昇トレンドにあるとみている。
• サポートは、充分に試された1.3400 (S1)で見出され、1.3321 (S2)と1.3232 (S3)がこれに続くだろう。
• レジスタンス水準は、1.3512 (R1)水準に存在し、1.3564 (R2)と1.3706 (R3)がこれに続くだろう。後者の2つは日足チャートに見出される。
USD/JPY
• USD/JPYは、レジスタンスを、9月11日~18日の波の61.8%フィボナッチ・リトレースメント水準近くに見出し、99.15水準(本日のレジスタンス)を下方突破した。本原稿執筆現在において、同ペアは、青色の上昇トレンドラインを試しつつあり、弱気筋がどうにかこの水準を下回るところにまで価格を押し下げ、98.52(S1)のサポートを突破することができれば、トレンドの反転のシグナルという点で注目される。RSIとMACDオシレーターのいずれもが下落しつつあり、さらなる下落の動きの可能性が高まっている。
• サポート水準は、98.53 (S1)に存在し、97.87 (S2)と97.00 (S3)がこれに続くだろう。
• レジスタンスは、99.15(R1)に認められ、99.66 (R2)と心理的に切りの良い数字である100.00(R3)がこれに続くだろう。
EUR/GBP
• EUR/GBPは、0.8462(R2)でレジスタンスを見出した後、昨日は低下し、0.8422(本日のレジスタンス)のサポート水準を下回るまで下落した。しかし、欧州時間の午前中には、強気筋が盛り返し、前回の安値を下回る水準にまで下落することを食い止めた。同ペアが上昇し続け、再び0.8422(R1)を上方突破すれば、前回のコメントで述べた調整局面が続くと予想される。
• サポート水準が、0.8355 (S1)、 0.8324 (S2)、0.8270 (S3)に認められる。後者の二つは、日足チャートに見出される。
• レジスタンスは、0.8422(R1)水準で見出され、0.8462 (R2)と0.8504 (R3)がこれに続くだろう。
金
• 金は、再びどうにか下落トレンドチャネルの上限を上方突破し、より高い安値を形成した。欧州の開場時、金は、1316(S1)と1335(R1)水準の間で取り引きされており、後者を上方突破すれば、下落トレンドが終了するという私の憶測がさらに裏付けられることになるだろう。RSIとMACDオシレーターのいずれもが中立的水準にあり、金に関する次の方向感のある動きについては何の手がかりも示していない。
• サポート水準は、1316 (S1)に存在し、1291 (S2)と1273 (S3)がこれに続くだろう。
• レジスタンスは、1335(R1)水準に認められ、1368 (R2)と1394 (R3)がこれに続くだろう。
原油
• WTIは、下落トレンドチャネルの下限を試し続けた。価格がどうにかこの水準で反発し、103.49(R1)のレジスタンス水準を上方突破すれば、調整はさらなるレジスタンス領域に向けて開始される可能性がある。RSIは、30水準を首尾よく試し、上昇したため、前述のシナリオを示唆している。しかし、WTIの価格が依然として右肩下がりのチャネル内で推移しており、20期間移動平均が200期間移動平均を下回っているため、トレンドは依然として下落トレンドにあるとみられる。
• サポート水準は、102.23(S1)、100.65 (S2)、99.12 (S3)に存在する。
• レジスタンス水準は、103.49 (R1)に存在し、104.40 (R2)と106.06 (R3)がこれに続くだろう。
通貨レートベンチマーク - 今日の勝者と敗者
マーケット概要