債務の行き詰まりにも拘わらず、市場は楽観的
株価は上昇、VIX指数は下落、USDは下落、金は急激に下落…最近馴染みとなったパターンである。株価はアジア時間の今朝も引き続き上昇したが、S&P500先物は、欧州取引時間の早朝に0.7%下落した。市場は、米国の財政/債務上限の議論が行き詰っているとはあまり考えていないようだ。この脅威を真剣にとらえている唯一の市場である、米国債市場では、11月と12月の利回りは10月の利回りと同様に上昇したが、1月以降の利回りは、数ベーシスしか上昇しておらず、両党が、より多くの議論のための時間稼ぎをするための合意に達するべく議論しているため、問題はさらに先送りされると人々が考え始めている可能性があることを示している。
両党が、合意に近付いたという兆候は何も見当たらない。その一方で、共和党は、民主党が「妥協」しそうにない上、最初の段階から間違っていたこの戦いにおいて、共和党に「勝利」宣言を許したり、面子を立てるような材料を与えようとしたりしないことに、衝撃を受けているように見受けられる。今や、ある雑誌に諷刺に富んだ見出しが躍ったことから生じた騒ぎを収めるのは困難になっている。それは、「ベイナー氏:オバマ氏は、私が引き起こした危機の終焉を頑なに拒否している」というものであり、共和党のポジションをかなり正確に描写しているように見受けられる。共和党上院議員であるジョン・マケイン氏は、民主党に対し「共和党に恥をかかせようとするなら、アメリカの政治における事態は変化する」と述べた。これは、政治ではなく、プライドの問題になってしまっている。状況は、向こう数日間でさらに著しく悪化し、その結果、リスク・オン取引は反転すると予想される。実際、AUDは今朝弱含んでおり、対USDで唯一下落した通貨となったが、これは、オーストラリアの8月の住宅ローン許可件数が前月比3.9%減少し、今年初めての減少となったことによるものである。JPYとCHFも、今朝は強含んだが、大幅なものではなかった。
米国、日本、カナダは休日であり、英国から発表される指標はないため、本日発表される指標では、ユーロ圏の8月の鉱工業生産指数だけが唯一重要な指標である。同指標は、前月の前月比-1.5%から一転して、前月比0.8%の上昇を示すと予想される。今週全体としては、焦点は、中国から大量に発表される月1のデータであろう。今朝、9月のCPIとPPIが発表され(前者が前年比3.1%、後者が前年比-1.3%であり、いずれも前月に比べいくらか加速した)。金曜日には、第3四半期のGDP値、鉱工業生産指数、固定資産投資、小売売上高が発表される予定で、すべて9月に関するものである。その他の焦点は、火曜日のZEW景況指数だろう。米国では、2つの連銀指数-ニューヨーク連銀とフィラデルフィア連銀-に加え、住宅着工件数および先行指標が発表される。英国では、投資家が、水曜日に発表される最も重要な英国の雇用統計と木曜日の小売売上高を待ちかまえることになるだろう。
マーケット
EUR/USD
• EUR/USDは、民主党と共和党の指導者が、財政と債務の行き詰まりを解決することができなかったことを受けて上昇した。レートは、紫色の右肩下がりのチャネルの上限でレジスタンスを見出し、欧州取引時間の早朝、1.3564(R1)のレジスタンス・バリアーを試しつつある。このハードルを明らかに突破すれば、短期的なチャネルの突破を示唆するとみられ、短期的な高値である1.3644(R2)を目指すことになるだろう。しかし、レートは依然として、下落傾向にあり、RSIとMACDオシレーターのいずれもが依然として青色のレジスタンス・ラインを下回っている。このため、これまでのコメントで述べた調整局面は依然として有効であると考えられる。
• サポート:1.3461 (S1), 1.3400 (S2), 1.3324(S3)
• レジスタンス:1.3564 (R1), 1.3644 (R2), 1.3706 (R3)
USD/JPY
• USD/JPYは、米国の債務懸念から、投資家が安全資産を求めたため、欧州取引時間は、弱気なギャップで始まった。同ペアは、9月11日~10月8日の下落の50%フィボナッチ・リトレースメント水準でレジスタンスを見出し、本原稿執筆現在、97.86(S1)のサポート水準と98.57(R1)のレジスタンス水準との間にある。売り圧力が、買い圧力を上回れば、価格は、97.86(S1)バリアーを試すと予想される。RSIは、買われ過ぎの領域を脱したばかりであり、MACDは、強気な領域にあるトリガーラインを下方にクロスしており、下落方向への波を示唆している。
• サポート:97.86 (S1), 97.00 (S2), 96.55 (S3)
• レジスタンス:98.57 (R1), 99.05 (R2), 99.66 (R3)
EUR/GBP
• EUR/GBPは若干上昇し、0.8462(S1)のサポートと0.8503(R1)のレジスタンス・バリアーの間に留まっている。欧州時間の早朝、同ペアは、このレジスタンス水準を若干下回って推移している。強気筋がどうにかこの攻防で価格を押し上げることができれば、前回の下落局面の161.8%フィボナッチ・イクステンション水準に近い0.8552(R2)のレジスタンス水準に向けたイクステンションが生じるだろう。しかし、両オシレーターと価格動向の間の短期的なマイナスの差を無視すべきではなく、強気なモメンタムの減速が伺える。
• サポート:0.8462 (S1), 0.8428 (S2), 0.8388 (S3)
• レジスタンス:0.8503 (R1), 0.8552 (R2) and 0.8631 (R3)
金
• 金は、米国の債務問題の行き詰まりにも拘わらず、急激に低下し、1277のバリアー(金曜日のサポート)を下方突破した。その後まもなく、金は1261(S1)水準から反発し、若干上昇した。私の見解では、価格は、青色の下落トレンド・ラインから離れれば、上昇への戻しが近い将来生じると予想される。RSIオシレーターは、売られ過ぎの領域を脱しようとしていることから、この見方を支持している。しかし、金は依然として青色の下落トレンド・ラインを下回っており、50期間移動平均が200期間移動平均を下回っていることから、下落トレンドが依然として有効であることを裏付けている。
• サポート:1261 (S1), 1242(S2), 1221 (S3)
• レジスタンス:1277 (R1), 1291 (R2), 1316 (R3)
原油
• デフォルトの可能性が経済成長を遅らせ、燃料需要を弱体化させるのではないかとの懸念が浮上するなか、米国の議会がどうにか債務上限を引き上げるための合意を見出すべく奮闘したため、金曜日、WTIは下落した。価格は予想通り、102.23水準を下方突破し、101.02(S1)のフロアーに達した。サポート水準に達した後、価格は上昇し、再び102.23(R1)を若干下回る水準に達した。WTIが引き続き下落傾向にあるため、下落トレンドは引き続き有効であり、両オシレーターは依然として右肩下がりの青色のラインを下回っている。しかし、弱気筋がWTIを101.02(S1)のフロアーを下回る水準にまで押し下げることができなかったことから、下落トレンドのモメンタムが弱体化し始めたのかもしれないということが伺える。
• サポート:101.02 (S1), 99.26 (S2), 97.36 (S3)
• レジスタンス:102.23 (R1), 104.19 (R2), 106.06 (R3)
通貨レートベンチマーク - 今日の勝者と敗者
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