金の投資に関する古典的な戒めとして以下のようなものがある。
「金価格の上昇が止まらないように思える時でも、値上がりは突如として終わりを迎える。そしてそれは値下がりの前兆である」というものだ。
7月11日の8月限金先物は1400ドル台で推移。先週付けた約6年ぶりとなる高値の1439.99ドルに迫っている。
このままの勢いで1500ドル台を突破することはあり得るだろうか。
この問いの答えはパウエル議長議会証言の利下げ姿勢に大いに左右されるだろう。
7月30・31日に行われるFOMCにおいて、フェデラル・ファンド金利が2.25%-2.5%から2%-2.25%へ引き下げられる確率を100%として市場は先物価格に織り込んでいる。
6月米非農業部門雇用者数は16万人増とされていた予想を大きく上回る22万4000人増となった。好調な雇用統計の結果を受け利下げ観測は一部で弱まっている。
パウエルFRB議長による議会証言は今月末の利下げ示唆
パウエルFRB議長の議会証言は、7月FOMCでの利下げ有無の手がかりとなるため金市場からも関心が寄せられていた。7月10日21時30分の議会証言のテキスト公開後、金先物は大幅に上昇した。
6月FOMC後に発表された声明では、「辛抱強くなる」との文言が削除されていた。6月米雇用統計が好調だったものの利下げ観測が根強いのはこのためだ。パウエル議長は経済減速を防ぐため保険としての利下げを実行するのではないかとの見方が強まっている。
とはいえFRBはこれまで利下げに関し慎重な姿勢を示してきた。よって7月に市場が期待する最低25ベーシスポイントの利下げを行わない可能性もある。一方で金トレーダーの一部は50ベーシスポイントの利下げを強く期待している。
以下のFRB委員も今週講演を予定している。ジョン・ウィリアムスニューヨーク連銀総裁、ジェームズ・ブラードセントルイス連銀総裁、ラファエル・ボスティックアトランタ連銀総裁、ランダル・クォールズFRB副議長、トーマス・バーキンリッチモンド連銀総裁、そしてニール・カシュカリミネアポリス連銀総裁だ。
その中でも、6月のFOMCで唯一金利維持に反対票を投じたブラード氏の発言に注目が集まっている。同氏はFOMCの中でとりわけハト派の委員である。
金価格1500ドルの時代がやってくる ー それはいつか
バンクオブアメリカ・メリルリンチ(NYSE:BAC)は金価格が1500ドル以上に上昇する見込みは高いと主張する一方で、関連する短期的リスクについて懸念している。
先週同行は以下のように述べている。
「世界経済に対する向かい風が強くなる中でFRBのハト派姿勢が強化され、金価格は1年以内に1オンス当たり1500ドル以上に押し上げられるとみられる。しかし我々は、利下げに関するFRBの発言に対し市場が即座に反応することを懸念している。金融緩和が延期された場合、金価格はすぐに押し下げられうる。」
UBSの貴金属ストラテジストは以下のように同調している。
「度々金価格に下げは見られるものの、今後のマクロ環境は金価格にとって好材料になると考えている」
UBSは、2019年末の金価格を1400ドル、2020年末は1450ドルと予想している。2021年から2023年にかけては、1500ドル丁度、もしくはわずかに上回る程度になると予想している。