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トランプ大統領の発言に左右された、2018年のコモディティ市場

発行済 2018-12-26 18:46
更新済 2020-09-02 15:05
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トランプ米大統領の自由気ままな発言によって、市場が影響を受けていることは無視できない。今年度、特に同氏の発言による影響を受けた市場はコモディティ市場といえよう。景気の波に左右されやすい原油市場はここ数ヶ月間、同氏の発言による影響を受けた。

トランプ大統領のツイッター内での、移民、貿易、気候変動もしくはホワイトハウス内のメンバー解任に関する発言は市場に大きく影響を与えるため、ウォール街のトレーダーは終日トランプ大統領のツイッターから目が離せない。そんな中トランプ氏の発言によって株価に大幅な変動が起こる可能性を把握することができる「Trump Trigger」と呼ばれるアプリがローンチされている。

トランプ政権が2016年に発足して以降、同氏はエネルギー政策を推進することで米石油業者を優遇してきたが、テキサスといった主要産油地域のエネルギー業界は、政府(トランプ大統領)からの影響を受けずに操業してきた。トランプ大統領は今年度初旬に、米国のほぼすべての沿岸における、石油・ガスの掘削の新規開業を許可し、今月初旬には西海岸の900万エーカーに及ぶ地域での掘削を開始した。また同氏は、新規石炭関連施設に対する環境規制の緩和も行っていた。

トランプ大統領の発言によって、エネルギー業界からの支持を失う

トランプ大統領が原油価格の押し下げを要求する発言によって、エネルギー業界からの支持が失われている。

WTI原油 週足チャート

石油業界からの同氏への不満は、同氏が今年の春にオバマ政権時のイラン核合意から離脱し、イランに対して原油の禁輸制裁を表明したことから始まった。

ロシアを含む、OPEC加盟国と非加盟国が原油生産量を最大水準まで増やした後、トランプ大統領はイラン産原油の禁輸制裁適用除外を発表したことで、原油市場は供給過剰となった。原油価格はイラン制裁の発表によって30%もの上昇となったものの、その後の適用除外の影響もあり、現在は40%超の下落となっている。OPECが原油価格の維持に向けて減産の発表をした際には、同氏は減産への反対をツイッターで発言し、原油価格を抑えようとしていたのであった。

ちょうど同時期に、サウジ皇太子はサウジアラビア人ジャーナリストのジャマル・カショギ氏殺害の容疑を受けていた。トランプ大統領はサウジアラビア政府に対して、殺害に対する制裁を逃れたければ、原油の減産を行わないよう圧力をかけていた。結局、サウジアラビア政府は殺人の疑いから逃れ、OPECは12月初旬に減産を行うことを発表することとなった。

世界経済の減速を受けて、原油価格は影響を受けている

世界経済の減速を受けて、原油価格は下落局面にある。

石油業界に詳しい、シカゴのPrice Futures Groupのシニアエネルギーアナリスト、フィル・フリン氏は、トランプ大統領は歴代大統領が成し遂げなかったことを行っていると言う。

「歴代大統領はエネルギーの市場価格を上手くコントロールすることができなかった。特にオバマ、ブッシュ大統領といった過去の大統領は「ガソリンの市場価格はコントロールできない」と発言していた。だが、トランプ大統領は自身のSNSなどでの発言を通じて、原油価格を意のままにしたのである。そして、同氏は中国との貿易戦争に対する発言によって、大豆や貴金属価格も混乱させたのである。中国はそれらのコモディティの最大輸入国であるからだ」

原油に続き、大豆と銅にも影響が及ぶ

だがフリン氏は、トランプ大統領が原油価格を崩壊させたことで、同氏への支持は失われたと述べる。

「トランプ大統領の発言によって原油価格が崩壊し、私は全く嬉しくない。おそらくトランプ政権を支持していたエネルギー業界の人も同じ気持ちだろう。同氏が中国との貿易戦争を収束させることができればいいのだが、長引くこととなれば、市場のボラティリティは急騰し、エネルギー業界以外も好ましくない状態となる」

12月初旬に米中間で90日間の休戦合意がなされ、中国は米国産大豆の購入再開を発表したが、大豆価格は同報道に対して上昇の色をほとんど見せなかった。今年度の大豆価格は8%の下落を見込んでいる。価格も同様に下落しており、今年度は19%の下落を見込む。

恩恵を受ける者もいれば、痛手を受ける者もいる

テキサスの拠点を置く油田施設の技術者、スティーブン・グリーン氏は原油掘削で壊れた装置を油井から引き上げるビジネスを行っていたが、数年前のシェール価格の急落を受けて廃業することとなった。同氏は再開に向けて融資を獲得しようと試みたが、トランプ大統領の原油価格押し下げを要求するツイートを受けて、融資獲得は難しくなったと述べる。

テキサスのシェールオイル取引者、スティーブ・スミス氏も同様に幻滅している。

「数か月前まで原油価格は1バレル77ドルであったが、その流れは終わってしまった。シェールの産出には、非常に高価な設備費用と電気水道代がかかる。例えるならば、2ヶ月間で10万ドルを稼いだとしても、生活費に3万ドルかかるようなものだ」

2週間前にOPEC総会が終了して以降、トランプ大統領は原油について一切触れていない。同氏は原油価格の高止まりを非難していたものの、年初来高値から30ドル下落させるまで押し下げる必要はなかったのである。

しかし、同氏の行動によって皆が苦しめられるわけではないだろうと、ニューヨークの原油ファンドであるTyche Capital Advisorsのタリク・ザヒル氏は述べる。

「トランプ大統領のツイートによって、原油価格の上昇を抑え、下落を見込んでいた私にとっては優位に動いた。私はショートの利確を心配する必要はないし、価格を押し下げようとしてるトランプの恩恵を受けている」

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