先週までのおさらいですが、短期的に金相場が変調する兆しとして、以下の3つのポイントを挙げていました。
1.東京市場で委託玉の売り越しが減ってくる。
2.フォワードレートのマイナスがプラスに転じる。
3.CFTC建玉明細でNY金の売りが200トン台に減る。
1つ目については先週売り越しのままで変化はありませんが、2つ目、3つ目については変化が生じました。
これについて解説していきます。
まず、2つ目のフォワードレートですが、12/9(現地、東京12/10朝のデータ)にプラスに転換しています。
11月に入りフォワードレートがマイナスの状態=売りポジションの買い戻し(手仕舞い)、いわゆるショートカバーが誘発されやすい状況が続いていましたが、これがプラスに転じました。ショートカバーのパワーが減ることを意味しています。これが2つ目のキーワード、フォワードレートの変化です。
※フォワードレートとは
次に、ドル建て60分足(2014年11月~)のチャートをご覧ください。
先月11月から4回ほど上昇する場面がありましたが、これらは投機筋の売りポジションの買い戻し(ショートカバー)による上昇です。
その投機筋のポジションの変化ですが、11月から4週連続で売りポジション(青の棒グラフ)が減っているのが分かります。
つまり、フォワードレートがマイナスの環境において、投機筋が11月までに積み上がっていた売りポジションを解消してきたことが価格の上昇につながったのです。
3つ目のポイント、CFTCの建玉明細で投機筋の売りポジションが200トンまで減ることが目安でした。その売りポジションは目安の200トン台までは減っていないものの、300トン前半まで減少しています。
一方、買いポジションは目安の800トン台手前、700トン後半まで増加しています。まだ少し上値余地は見られるものの、これ以上一段と上昇するためには、新規で買いが入ってくることが必要です。
スタンダードバンクの池水雄一氏のレポートによれば、1230ドル以上では実需の買いは入っていないようです。実需が買わないのであれば、価格を押し上げるためには投機筋の買いが不可欠です。
目先の注目は、取組高が増えるかどうかです。取組高が増えると投機筋の買いが増えていると推測することができます。
2つのポイントの変化から伺えることは、NY金は若干上値が重いということ。おそらく年末は1200ドル~1230ドルで推移すると見ています。
結論としては、現在の状況では、短期的な売買の判断は難しいというのが本音です。
≪2015年の年始相場展望≫
それでは、もう少し長く中期の話をしたいと思います。具体的には2015年の年始相場についてです。
私は2015年の年始相場は2013年、2014年の年始相場に似ていると思っています。
2013年の年始相場は、東京金の相場は上昇しましたが、NY金は下落していました。一方で、為替は日銀の金融緩和政策、アベノミクスにより、円安が加速したのです。つまり、NY金の下落よりも円安の勢いが勝り、東京金は上昇したのが2013年の年始相場でした。
このような円安での押上げが、2015年の年始相場でも再現されるとみています。下地としては、日銀の追加緩和策、増税見送りによる財政懸念など円安への要素が備わっており、円安での東京金の押上げが期待されます。
他方では、石油価格の急落、低迷で資源国の通貨不安が出てきました。また記憶に新しいと思いますが、2014年初頭は米国の利上げ観測により、新興国から米国に資金が戻るのではないかという新興国の通貨不安が起こりました。このときNY金は上昇しています。
結論として、円安による押し上げ、通貨不安によるNY金の上昇で、東京金の2015年の年始相場は上昇すると私はみています。下値は浅く上昇へ向かう見通しで、年末までのもみあいでの安値は買いが良いと思っています。
過去3年間、2012、2013、2014年の年始相場では東京金は上昇しており、2015年の年始相場も上昇するか注目したいところです。
当記事は、「セントラルマーケットコラム~経済金融・コモディティ~」からの転載です。またコラムでは、経済金融、貴金属のスペシャリストによるコラムも掲載しております。こちらもぜひご覧ください。