今回の米連邦公開市場委員会(FOMC)で警戒すべきは、タカ派リスクにあろう。イエレンFRBが6月利上げのシグナルを発信してきた場合、注視すべきは米株の動向だろう。
米早期利上げ懸念を背景に不安定化している米株とは対照的に、日欧株式では上値トライのムードが強まっている。背景にあるのは日欧緩和マネーの存在だ。この存在が重要なのは、日欧株式のサポート要因としてだけではなく、イエレンFRBが超えるべき金融正常化のハードルを確実に下げる役割も果たしているからだ。FOMC後に米株が下落しても、スタビライザーとして日欧緩和マネーが米国株式市場をサポートすれば、その「トレンド化」は阻止されよう。結果、世界的な株高も維持され、USD/JPYは2007年6月に付けた天井124.15レベルを視野に上昇圧力が強まろう。
逆に米株の下落が「トレンド化」すれば、米金利のみの上昇を背景に短期的にリスク回避のドル高(対円以外でのドル高)の展開となろう。一方、円相場は株安に反応し、クロス円を中心に円高圧力が強まろう。
日欧緩和マネーが、米国マーケットに与える効果は他にもある。それが、米金利の変動(急上昇)リスクの軽減効果だ。日欧の緩和政策により、利回りと流動性の面から米債投資の妙味が相対的に高まっており、米株が上値トライとなっても米債買いにより米金利は緩やかな上昇トレンドを描くことが想定される。
だがこの点についても、米株の動向次第でドル安リスクを強める可能性があるため要注意。FOMC後、米株の下落が「トレンド化」した場合、投資妙味とリスク回避圧力が合わさることで米金利への低下圧力が一気に強まろう。低水準での攻防が続いているとはいえ、ドル相場上昇の土台となっているのは米金利の上昇である。その土台が米株下落の「トレンド化」で崩れる事態となれば、中長期的にドル安圧力を強めよう。「株安+米金利低下」となれば、USD/JPYは115.50レベルを視野にドル安圧力が急速に強まる可能性があろう。