〇米減税法案進展、金融規制緩和期待などで追い風〇
前日に日本が警告アナウンスをしていたためか、北朝鮮のICBM級ミサイル発射で崩れなかった。
ナスダックが一時マイナスとなる場面があり、NYダウも上げ幅を一時縮めたが、その後急速に切り返した。
上昇率はNYダウ1.09%(225ドル高の23836ドル)、ナスダックは0.49%高。
NYダウの最高値更新は一週間ぶりで、ナスダックとの差は金融株のウェイト差と見られる。
GSとJPモルガン2社でダウを約50ドル押し上げている。
パウエル次期FRB議長の上院銀行委員会での議会証言が好感された。
大枠としてイエレン議長の路線を踏襲し、12月利上げ、バランスシート縮小姿勢を示すと同時に、「大き過ぎて潰せない」銀行問題は解消との認識を示し、規制の骨格を残しつつも、緩和姿勢を示したと受け止められた。
折から、オバマ政権が設立した消費者金融保護局で、トップ人事が法廷闘争に持ち込まれる混乱が発生している。
トランプ大統領が指名し、組織改革方針を打ち出しているマルバニー行政管理予算局長を支援する格好になったと見られる。
金融株の反応には布石があった。
英国で中央銀行が行ったストレステストに、14年の審査開始以来初めて、全主要行が合格した。
カーニー総裁は「EU離脱が無秩序なものになったとしても、銀行システムは実体経済を支え続けることができると英中銀は判断している」と述べた。
英国株は1.04%急騰し、大陸株の0.5%前後を引き離した(英紙デイリー・テレグラフが「英・EUが離脱清算金巡り大筋合意」と報道しているが、政府高官は「認識せず」とコメント、不安心理が軽減されたかどうかは不明。
ポンドは対ドルで1%強上昇)。
米国では上院予算委員会が共和党の税制改革法案を承認したことも大きい。
30日にも上院本会議で採決見通しとなった。
ただ、既に法案を承認した下院案とはすり合わせの必要がある。
まだ、難航するとの見方も根強いが、Xマス休暇入り前の決着に大きく前進したとの受け止め方。
コンファレンス・ボード(CB)が発表した11月米消費者信頼感指数が129.5、事前予想の124.0を大きく上回り、2000年11月以来の高水準を記録したことも好感された。
来年の世界成長率予想を主要金融機関が続々と発表しているが、今年の3.7%程度の成長に対し、米GSと英バークレイズが4%成長との強気見通しを出している。
弱気派はシティGの3.4%。
4%成長なら、2011年以来。
カギの一つ、中国政府は6.5%程度の成長維持姿勢を示している。
もう一つ、「ステルス・ヘッジ」と呼ばれるリスクヘッジのポジションが上昇バネに働いた可能性がある。
もたついた場面でヘッジポジションが溜まり易く、S&P500指数のオプション取引では、コール(買う権利)1に対しプット(売る権利)は2.1倍と過去5年間で最もディフェンシブなポジション取りになっているとされる。
ミニ踏み上げ的要素が入っていると考えられる。
以上
出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(17/11/29号)