[ドバイ/リヤド 5日 ロイター] - サウジアラビア国営石油会社サウジアラムコは5日、新規株式公開(IPO)価格を1株当たり32リヤル(8.53ドル)と仮条件の上限に設定したと発表した。
資金調達額は256億ドルと、中国電子商取引最大手アリババ (N:BABA)が2014年の上場時に調達した250億ドルを超え、過去最高となる。
売り出し株数の15%を対象とする「グリーンシューオプション(株式の引受価格での追加取得権)」が行使されれば調達額は最大294億ドルまで増加する。
公開価格をベースにしたアラムコの時価総額は1兆7000億ドルと、米アップル (O:AAPL)を抜いて世界最大となる。ただ、サウジのムハンマド皇太子が目指していた2兆ドルには届かない。
上場日は明らかにされていないが、関係筋によると12月11日に予定されているという。
アラムコは今回、国内市場で発行済み株式の1.5%を公開。機関投資家から1060億ドル、個人投資家からは126億ドルの応募があった。
当初は国内・海外市場で発行済み株式の5%を公開し、最大1000億ドルを調達する計画だった。しかし、地球温暖化や政治的リスク、企業の透明性欠如などを巡る懸念を背景に、海外投資家からは割高との声が上がった。
アラムコのIPOは、石油依存から脱却し、収益源の多様化を目指すサウジの経済改革の一環だ。
アブダビ商業銀行のチーフエコノミスト、モニカ・マリク氏は「IPOの資金調達額自体は経済規模や変革に向けた計画に必要な中期資金に照らして比較的抑えられているが、他の資金調達と組み合わせれば、経済の多様化に向けた投資計画を進めるための有意義な資本がある」と述べた。
サウジ政府は愛国者の義務としてIPOへの参加を促した。銀行は株式を購入する個人に低利の融資を提供した。それでも、アラムコIPOへの関心は他の新興国IPOと比べて控えめだった。
中国の電子商取引大手アリババ (N:BABA)による先の香港IPOは応募倍率が40倍に上った。
アラムコへの投資には、原油相場や原油需要の先行きを巡る不透明感が伴う。サウジ政府がアラムコをコントロールしていることによる政治的リスクもある。サウジは著名ジャーナリスト、ジャマル・カショギ氏の殺害やイエメン内戦への介入などを巡り国際社会の批判を浴びた経緯がある。
*内容を追加しました。