[ワシントン/メキシコ市 10日 ロイター] - 米・メキシコ・カナダの3カ国は10日、北米自由貿易協定(NAFTA)に代わる新たな貿易協定「米・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」の修正文書に署名した。
署名式にはライトハイザー米通商代表部(USTR)代表、トランプ大統領の娘婿クシュナー大統領上級顧問、カナダのフリーランド副首相、メキシコのロペスオブラドール大統領が参加した。
3カ国は昨年、新協定に署名したが、その後、米下院で過半数を握る野党民主党が労働基準の厳格化などを要求し、3カ国が修正協議を行ってきた。
修正合意には、メキシコの労働改革を監視する米委員会の設置や議会への報告義務、労働改革が進捗しない場合の処分執行などが盛り込まれた。また、バイオ医薬品データを10年間保護する規定が削除された。この規定を巡っては、米国の薬価上昇につながるとの懸念が出ていた。
ライトハイザー氏は「われわれが合意にこぎ着けたのは奇跡以外の何物でもなく、内容の素晴らしさの証左だと思う」と語った。
フリーランド氏も「世界的に通商合意が困難になる中、協力して成し遂げた」として、多国間主義の勝利をたたえた。
トランプ政権と民主党はこの1週間、労働基準などを巡りメキシコと協議を重ねた結果、外部専門家による工場での順守状況点検など、ルールの厳格化で合意を取り付けた。
ペロシ米下院議長(民主党)は記者会見で「政権の当初案よりはるかに優れている」とし、USMCAは下院で採決できる内容になったとの見方を示した。
米共和・民主両党は、新協定には幅広い支持があるとしている。
民主党のニール下院歳入委員長は、議員が文書の一部を精査する方針だが、下院での採決に「不要な遅延」が生じる状況は想定していないと述べた。
ただ、共和党のマコネル上院院内総務は、上院では休会前に協定を取り上げないと発言。採決が年明けに持ち越される可能性が浮上し、早期批准に新たな不透明感が生じた。
一方、グリシャム米大統領報道官は、ホワイトハウスは年内の批准を「強く求めていく」と言明した。
トランプ大統領はツイッターに「USMCA法案は米国史上で最良かつ最も重要な貿易協定になる。皆にとって良い内容だ」と投稿し、「最悪の協定だったNAFTAをついに廃止できる!」と強調した。
USMCA修正協議では、ライトハイザー氏が自動車の原産地規則における域内調達の定義について、鉄鋼やアルミニウムは原料を溶かす工程から北米で行われると新たに規定するよう要求していた。
当初合意された協定では、北米で生産する自動車の部材のうち70%を域内で調達する規定だったが、部材の生産過程については定めておらず、中国などから半製品を調達できる可能性があった。
事情に詳しい業界筋によると、メキシコとカナダは鉄鋼について、7年の移行期間を設けることを条件に新規定に同意した。アルミに関しては、10年後に再検討することを条件に要求が取り下げられたという。
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