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FJネクHD Research Memo(6):2022年3月期は期初計画を上回る大幅な増益。財務基盤も高い安定性を維持

発行済 2022-07-22 16:06
更新済 2022-07-22 16:15
© Reuters.
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■業績推移

1. 過去の業績推移
過去の業績を振り返ると、首都圏における資産運用型マンションに対する賃貸需要、並びに購入需要の拡大に支えられて業績は総じて順調に推移してきた。
2009年3月期にリーマン・ショックに伴う景気後退の影響で業績のボトムを迎えたものの、FJネクストホールディングス (TYO:8935)は仕入高を追わずに採算性に合った仕入れを継続していくという方針の下、堅実な物件開発を進めたことで、大きな痛手を被った不動産業界においては比較的軽微な落ち込みで乗り切り、その後は景気回復とともに順調に業績を拡大してきた。
特に2016年3月期以降は大幅な増収増益を続けており、売上高は2020年3月期まで5年連続で過去最高を更新した。
2021年3月期はコロナ禍の影響により一旦後退したものの、2022年3月期は大きく回復しており、社歴を重ねながらも、同社がまだまだ成長過程にあることを示している。


財務面では、業績の拡大に伴って有利子負債残高も増えてきたが、内部留保の積み増しなどにより自己資本比率も高い水準を維持しており、財務基盤の安定性に懸念はない。


なお、同社がリーマン・ショックに伴う厳しい業界環境を比較的スムーズに乗り切れたのは、厳選された好立地を含め、収益還元法による採算性を重視した「ガーラ」ブランドの資産価値の高さ、並びに同社の財務基盤の安定性によるものと言える。


2. 2022年3月期決算の概要
2022年3月期の業績は、売上高が前期比12.7%増の82,258百万円、営業利益が同23.7%増の9,095百万円、経常利益が同23.8%増の9,080百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同27.2%増の6,338百万円と期初計画を上回る大幅な増益を実現した。


売上高は、「不動産開発事業」「不動産管理事業」「旅館事業」の3つの事業がそれぞれ伸長した。
特に、主力の「不動産開発事業」におけるマンション販売戸数は2,456戸(前期比443戸増)※1と、コロナ禍により営業活動を一時自粛した前期と比較して大きく増加しており、コロナ禍においても資産運用型マンションに対する需要に変化がないことが確認できた。
期初計画を上回ったのも、販売戸数及び販売価格の両面で想定を上回ったことが理由である。
また、「不動産管理事業」も賃貸管理戸数の積み上げ※2により順調に拡大したほか、「旅館事業」についてもコロナ禍の影響を受けた前期から徐々に回復傾向にあるようだ。
一方、「建設事業」は工期の遅れ等により唯一減収となったが、マンション建設及び大規模修繕工事を中心とする受注環境そのものは好調に推移している。


※1 販売戸数2,456戸のうち、戦略的に取り組んでいる中古マンションは1,025戸(前期比154戸増)、ファミリー層向けマンションについても230戸(同57戸増)とそれぞれ大きく増加しており、業績の伸びをけん引した。

※2 2022年3月期末の賃貸管理戸数は17,432戸(前期末比352戸増)、建物管理棟数は327棟(同16棟増)に増加している。



利益面でも、増収に伴う収益の押し上げにより増益となった。
販売価格の見直しにより、土地仕入価格や建築費が高止まりするなかでも売上原価率は前期比で改善した。
販管費は広告宣伝費などにより増加したものの、増収により販管費率は低下したことで、営業利益率は11.1%(前期は10.1%)に上昇した。


一方、今後の業績の伸びに影響する「たな卸資産」(パイプライン)の状況については、販売が好調であったことや固定資産(自社保有の賃貸物件)への一部振替等により、「販売用不動産」(完成マンション)が前期末比で一時的に減少※1した一方、「仕掛販売用不動産」(開発用地及び開発中のマンション)については、厳しい仕入環境にあるなかでも、採算性を重視した仕入の継続により前期末比で増加することができた。
なお、「販売用不動産」の一部を固定資産に振り替えたのは、保有物件から安定的な賃貸収入※2を確保することが目的である。


※1 2022年3月期末の販売用不動産は677戸(前期末比790戸減)に一時的に減少したが、中古マンションの積極的な仕入れによりカバーしていく方針である。

※2 賃貸収入は「不動産開発事業」に含まれる。
2022年3月期の賃貸収入は前期比1.9%減の7,373百万円に若干減少したものの、高い水準を維持しており、業績の下支え要因となっている。



財政状態については、前述のとおり「たな卸資産」(販売用不動産及び仕掛販売用不動産)が減少した一方、「現金及び預金」や「有形固定資産」が増加し、その結果、総資産は前期末比2.0%減の82,659百万円となった。
一方、自己資本は内部留保の積み増しにより同9.4%増の58,917百万円となったことから、自己資本比率は71.3%(前期末は63.8%)に大きく上昇した。
有利子負債は同39.3%減の12,643百万円と減少し、有利子負債依存度※は15.3%(前期は24.7%)に低下した。
支払能力を示す流動比率も644.4%と高い水準にあることから、財務の安全性に懸念はない。
また、資本効率を示すROEは11.2%(前期は9.6%)と再び10%を超える水準に戻っており、バランスの良い財務内容を維持していると言える。


※有利子負債残高÷(負債合計+純資産)


3. 2023年3月期の業績予想
2023年3月期の業績予想について同社は、売上高を前期比3.3%増の85,000百万円、営業利益を同17.5%減の7,500百万円、経常利益を同17.4%減の7,500百万円、親会社株主に帰属する当期純利益を同21.1%減の5,000百万円と増収減益を見込んでいる。
なお、減益予想となっているのは、1)各セグメントにおいて一定程度の原材料価格の上昇を見込んでいること、2)「不動産開発事業」において、顧客ニーズが高まっている中古マンションの販売戸数増※を見込んでいることなどが理由である。


※中古マンションの利益率は新築マンションと比べて相対的に低い。



売上高は、コロナ禍の長期化や原材料価格の上昇など、不確実性の高い事業環境が続くなかでも、ITを活用した営業手法の採用やニーズを捉えた販売チャネルの開拓等を進め、各事業が堅調に推移する見通しのようだ。
「不動産開発事業」における販売戸数は2,500戸(前期比44戸増)を計画しており、ほぼコロナ禍前の最高水準に戻る想定である。
一方、利益面では、前述のとおり原材料価格の上昇や中古マンションの販売増による影響を保守的に見積もり、営業利益率は8.8%(前期は11.1%)に低下する見通しとなっている。


弊社でも、コロナ禍の長期化や原材料価格の上昇など先行き不透明感には注意が必要であるものの、首都圏における賃貸需要については底堅く推移しているうえ、中古マンションを含めて購入需要も根強いこと、さらに利益面でもネガティブ要因を保守的に織り込んだ水準となっていることから、同社の業績予想の達成は十分に可能であると見ている。
原材料価格の上昇に伴う建築コストへの影響が懸念されるなかで、戦略的に取り組んでいる中古マンション販売が業績を支えるポイントになると想定されるが、別の見方をすれば、ブランド力を含めた資産価値のメンテナンスやアフターサポートがしっかりしている同社だからこそ、中古マンション販売でも市場をリードできる可能性が高いと評価することができるだろう。
また、2024年3月期以降の業績の伸びにつながるパイプライン(用地仕入等)の状況のほか、軌道に乗ってきたファミリー層向けマンションの取り組みにも注目していきたい。


(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)


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