[東京 19日 ロイター] - 富国生命保険は2022年度下期の一般勘定運用で、日本国債を積み増す予定だ。上期で年度計画の8割以上を実行したが、下期も外債の償還金などを使って超長期債を引き続き買い増す。為替ヘッジ付き外債のオープン化は今年度分をほぼ終了。1ドル150円は、積極的にオープン外債のポジションを取りたいレベルではないとしている。
執行役員・財務企画部長の鈴木善之氏が18日、ロイターとのインタビューで述べた。
<来年度以降も、円金利は上昇見込み>
超長期債を中心とした日本国債(ソブリン)は上期に3900億円増額。下期は600億円の増額予定だ。年度計画は4500億円と5月時点より300億円増やした。上期で年度計画分をほぼ終了した格好だが、金利水準が大きく上昇した超長期債を、外債の償還金などを使って積み増す方針を継続する。
日本の20年国債利回りは今月18日時点で1.125%、30年国債利回りは1.510%に上昇しており、それぞれ約7年ぶりの高水準となっている。富国生命は、20年国債の予想レンジを0.20─1.00%から0.50─1.50%に引き上げた。
鈴木氏は「20─30年債金利は1%を超えてきている。さらなる金利上昇を待たないでも一定量を購入していいと判断した」と話す。その上で「円安による輸入物価の上昇は時間差で来年度にも表れてくるだろう。日銀総裁が交替してすぐに政策が変わるかはわからないが、金融政策の転換点が近づいており、すぐかどうかはともかく、来年度以降も方向としては金利は上昇しそうだ」との見方を示した。
<ドル150円水準、外債には慎重>
為替ヘッジ付き外債は上期5200億円減少した。下期も200億円の減少予定。為替ヘッジコストが上昇しているためで、年度計画も5400億円の減少と5月時点よりさらに1400億円減少幅を拡大させた。
オープン外債は上期に1800億円増加。下期は償還で600億円減少するが、年度計画は5月の増減ゼロから1200億円の増額に引き上げた。
ヘッジ外債のオープン化は、今年度必要な分は上期までにほとんど終わり、海外金利の上昇で含み損になっているヘッジ外債の分も、円安によるオープン外債の含み益で相殺することができているという。
ただ、さらなるオープン外債の積み増しには慎重だ。「満期保有が基本の長期投資家としては、外債を買うときは簿価が重要だ。1ドル150円というのは、進んでポジションを取りたいレベルではない」と鈴木氏は語った。
<円債の流動性に不安も>
エクイティ資産は上期、国内株、外国株、不動産いずれも変化なし。下期は、国内株が増減ゼロ、外国株は100億円、不動産は200億円のそれぞれ積み増し予定となっている。
日本株については「景気は底堅いと見ているが、企業の価格転嫁は進まず、マージンプレッシャー(利益の圧力)は続く」(鈴木氏)として、銘柄の入れ替えにとどめる方針だ。金融市場の不透明感が強く、前年度まで行っていた株式などでの積極的なリスクテークはいったん休止し、今年度は安全性と流動性の高い日本国債を中心とした運用を続ける。
ただ、日本国債の流動性には不安もあるという。今月、新発10年国債の業者間取引(日本相互証券ベース)は1999年に指標銘柄となって初めて4営業日連続で取引が成立しなかった。10年債は日銀の指し値オペの影響が大きいが、超長期債も薄商いが最近は目立っている。
鈴木氏は「売りたいときに売れないかもしれないというのは不安だ。レポで資金調達も可能だが、売買できるボリュームが限定的なのは心配」とした。
*22年度下期の相場見通し(レンジと年度末)は以下の通り。▼はマイナス。
日本国債10年物利回り ▼0.00―0.50%(年度末0.25%)
日本国債20年物利回り 0.50―1.50%(同1.30%)
米10年債利回り 3.00─5.00%(同4.50%)
日経平均 22000─28000円(同25000円)
米ダウ 24000─32000ドル(同28000ドル)
ドル/円 130―160円(同150円)
ユーロ/円 125―155円(同146円)
(伊賀大記 編集:久保信博)