■中長期の成長戦略1. 中期経営計画の目標と進捗状況ウェルス・マネジメント (T:3772)が2019年4月に発表した「中期経営計画2022」(2020年3月期−2022年3月期)では、前提とする事業環境について、2020年の東京オリンピックや2025年の大阪万博の開催を控え、訪日外国観光客数は2018年の約3,100万人から、将来的には約6,000万人規模にまで拡大すると見込んでいる。
また、訪日スタイルの変化や近隣諸国の富裕層の増加もあって、ニーズを満たすホテルの供給ニーズは大きいと見ている。
さらに、世界的に当面、低金利状況は続き、不動産アセットへの資金流入など、好調な事業環境が続くとしている。
中期経営計画では、2つの目標を掲げている。
1つはJ-REIT創設を目指すことによって、資産循環型ビジネスへの転換を図り、国内有数の受託資産を獲得することである。
もう1つは、東証1部上場基準を満たす基盤づくりを進める事である。
そのための基本戦略として、ビジネスモデルの確立、事業力の強化、経営基盤の安定化を目指す。
ビジネスモデルの確立では、リシェス・マネジメントが不動産を探し、投資家を集め、不動産を再生する。
ホテルWマネジメントは、マリオット、インターコンチネンタル、アコーホテルズなどの国際的なラグジュアリーホテルオペレーターとともにADR(ホテルの平均客室単価)の極大化を図り、ホテル収益の安定・拡大を図ることによって、J-REITに売却する。
そこで得た利益をまた再投資するという循環型のビジネスを確立することである。
また、事業力の強化では、良い不動産を見つけ、その不動産に対して一番適したホテルブランドを選び、そのオペレーターとタイアップしてADRの極大化を図る。
そのためには、当然、ホスピタリティを含めたサービス力の強化も必要である。
こうした、ビジネスモデルの確立、事業力の強化によって、経営の基盤の安定化を図る方針である。
このような基本戦略を推進することで、売上高を2019年3月期の31億円から2022年3月期には140億円へ、経常利益を9億円から40億円へ、EBITDAを10億円から45億円へと、それぞれ4倍超に拡大する意欲的な数値目標を掲げている。
計画初年度の2020年3月期は、2年目の目標数値を1年前倒しで概ね達成した好決算であった。
ただ、足元では世界的な新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、当面は世界経済が落ち込み、外国観光客の訪日もストップするなど、事業環境が悪化している。
しかし、同社グループでは、事業環境悪化の影響を大きく受けるホテル運営事業の落ち込みを、好調な不動産金融事業でカバーすることで、計画2年目も数値目標の達成を目指している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)