〇米経済に足踏み感、ドル円ポジション調整続く〇
6月前半以来、約6週間ぶりにドル円110円割れとなった。
東京市場で110.01円で踏み止まり、NY時間でも109.94円は一瞬で、110円30銭台で戻って来たので、4月の様な一気に108円台に行くことはないと思うが、トランプ政権混迷による円ショートの手仕舞いが背景と見られるだけに、ドル安観(主要通貨に対するドル指数は昨年5月以来の安値水準)は、なかなか拭えない印象だ。
今週末の米雇用統計に関心が高まる状況だ。
時事通信が31日までに集計した480社の4-6月期決算は、前年同期比7.8%増収、23.3%経常増益と好調。
ドル円平均111円、同3円円安が効いている。
通期は慎重予想が多く、前期比7.4%経常増益予想にとどまるが、概ね110円前提で、為替攻防は企業業績の見方を変える可能性がある(8/4発表予定のトヨタは105円前提で、前提を変えるか、上方修正を行うか注目される)。
ドル円で円のショートが膨らんだのは、ユーロ買い(一部メキシコペソ)の見返りと考えられるが、ユーロ高に一服感が出ていること、円を安心して売り込む時の米国の利上げシナリオに懐疑的な見方があることなどが、ポジション圧縮(円買い)につながっていると思われる。
なお、政策金利引き上げは短期金利に効くが、バランスシート縮小は保有する長期債売却で長期金利に効く。
ドル円はやや日米長期金利格差に注目していると考えられる。
9月にもバランスシート縮小の具体策が発表される見込みなのが、一方的な円高リスクを軽減していると見られる。
1日発表の米経済指標は良くなかった。
7月自動車販売は前年比7%減。
販売減は5ヵ月連続。
レンタカー向けを削減したと言うが、GM15.4%減、フォード7.5%減、FCA10.5%減(トヨタ+3.6%、ホンダ-1.2%、日産-3.2%と明暗)。
このペースで減れば、米社の4工場分が余るとされる。
6月個人消費は前月比+0.1%。
コア個人消費支出物価指数は前年比+1.5%。
所得伸びず、米個人消費は昨年7-9月期以降、目安の3%成長を下回る状況。
6月建設支出は前月比1.3%減(市場予想+0.4%)。
前年同月比では+1.6%とプラスを維持しているが、公共部門の落ち込みは前月比5.4%減、02年3月以来の大きさ。
連邦政府が同9.3%減、債務上限引き上げ問題の影響が出始めている可能性がある。
上院民主党トップが「北朝鮮抑制へ中国の対米投資阻止」を呼び掛けた。
対中では鉄鋼輸入制限なども控える。
北朝鮮問題などの攻防は、当面、米経済に抑制的に働く可能性もある。
今月の雇用統計だけで決着がつく訳ではないが、周りがやや弱めとの前提で雇用統計を見る必要がありそうだ。
1日の米10年物国債利回りは2.2532%に軟化したが、グリーンスパン氏が言うような「債券バブル」ではなさそうだ。
時間外のアップル決算は良好で、株高構図は崩れていない=したがってドルが一方的に崩れるリスクも小さいと考えられる。
以上
出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(17/8/2号)