安倍晋三首相の第2次政権発足と同時にスタートした「アベノミクス」が4年あまり経過し、ついに終えんを迎えつつあるようです。
それは、アメリカと日本の両国で政権運営が弱体化する見通しのためです。
早くも内政に行き詰ったトランプ政権は、対米貿易黒字国の通貨安誘導に対し攻勢を強めることでしょう。
アメリカの医療保険制度改革(オバマケア)の撤廃は、今年1月に就任したトランプ大統領による政策運営の最初の関門として注目されていました。
同法撤廃でねん出した費用を減税の財源する方針で、トランプ大統領が表明していた「驚くべき減税策」は撤廃とセットにしたものでした。
ところが、代替法案は支持を集められず、政権側はあっさりと引っ込めてしまいました。
オバマ前大統領がオバマケアを成立させてからちょうど7年後の3月23日、これをひっくり返そうとしたトランプ大統領の目論見は徒労に終わりました。
そればかりか求心力の乏しさが鮮明になり、かえって自身の窮地を際立たせてしまったようです。
直近の世論調査でトランプ政権の支持率はわずか37%。
当初からいわれていたような政権基盤の弱さが改めて示された格好です。
今後共和党と民主党との間で法案の修正協議を重ねる見通しですが、減税による成長期待を先取りしていた外為市場ではすでにドル売りに振れています。
連邦準備制度理事会(FRB)は金融引き締めサイクルに入り、ドルを浮揚させる力を失っていることでドル売りを弱められなくなるでしょう。
政権運営に暗雲が広がっているのは日本も同じです。
大阪市の学校法人「森友学園」に国有地が鑑定評価額を大幅に下回る価格で売却された問題で、首相夫人の関与が取りざたされています。
理事長1人を国会で証人喚問し、しかも発言内容を虚偽と一方的に決めつける進め方に不備があるのは明白です。
このまま幕引きをすれば、自民党は築地市場の豊洲移転問題ですでに厳しい情勢となっている東京都議選で、惨敗が必至と思われます。
そうなれば、自民党内では、これまでの安倍人事に不満を抱いている当選5回以上の入閣待機組を中心に、反主流勢力がうごめき始めるかもしれません。
政権支持率が日経平均株価とともに下落基調をたどれば、2018年12月までに行われる次期総選挙に向け、解散カードを切るのも難しくなります。
政権支持率の低下、株価の下落、円の上昇、日本経済の先行き不透明感、政権支持率の低下・・・という負のスパイラルです。
アメリカと日本は4月に日米経済対話を実施する予定です。
2月10日の日米首脳会談で日本に対する露骨な批判が聞かれなかったことで、日本の通貨政策は理解されたと政権側は主張しています。
しかし、トランプ政権は内政の失敗を通商政策で取り返そうと、対日貿易赤字の是正を目指し、日本側に為替政策の変更を強硬に求めることが予想されます。
日銀を通じた通貨安誘導により株価を押し上げてきたアベノミクスが封じられるのは、もはや時間の問題と言えそうです。
(吉池 威)
それは、アメリカと日本の両国で政権運営が弱体化する見通しのためです。
早くも内政に行き詰ったトランプ政権は、対米貿易黒字国の通貨安誘導に対し攻勢を強めることでしょう。
アメリカの医療保険制度改革(オバマケア)の撤廃は、今年1月に就任したトランプ大統領による政策運営の最初の関門として注目されていました。
同法撤廃でねん出した費用を減税の財源する方針で、トランプ大統領が表明していた「驚くべき減税策」は撤廃とセットにしたものでした。
ところが、代替法案は支持を集められず、政権側はあっさりと引っ込めてしまいました。
オバマ前大統領がオバマケアを成立させてからちょうど7年後の3月23日、これをひっくり返そうとしたトランプ大統領の目論見は徒労に終わりました。
そればかりか求心力の乏しさが鮮明になり、かえって自身の窮地を際立たせてしまったようです。
直近の世論調査でトランプ政権の支持率はわずか37%。
当初からいわれていたような政権基盤の弱さが改めて示された格好です。
今後共和党と民主党との間で法案の修正協議を重ねる見通しですが、減税による成長期待を先取りしていた外為市場ではすでにドル売りに振れています。
連邦準備制度理事会(FRB)は金融引き締めサイクルに入り、ドルを浮揚させる力を失っていることでドル売りを弱められなくなるでしょう。
政権運営に暗雲が広がっているのは日本も同じです。
大阪市の学校法人「森友学園」に国有地が鑑定評価額を大幅に下回る価格で売却された問題で、首相夫人の関与が取りざたされています。
理事長1人を国会で証人喚問し、しかも発言内容を虚偽と一方的に決めつける進め方に不備があるのは明白です。
このまま幕引きをすれば、自民党は築地市場の豊洲移転問題ですでに厳しい情勢となっている東京都議選で、惨敗が必至と思われます。
そうなれば、自民党内では、これまでの安倍人事に不満を抱いている当選5回以上の入閣待機組を中心に、反主流勢力がうごめき始めるかもしれません。
政権支持率が日経平均株価とともに下落基調をたどれば、2018年12月までに行われる次期総選挙に向け、解散カードを切るのも難しくなります。
政権支持率の低下、株価の下落、円の上昇、日本経済の先行き不透明感、政権支持率の低下・・・という負のスパイラルです。
アメリカと日本は4月に日米経済対話を実施する予定です。
2月10日の日米首脳会談で日本に対する露骨な批判が聞かれなかったことで、日本の通貨政策は理解されたと政権側は主張しています。
しかし、トランプ政権は内政の失敗を通商政策で取り返そうと、対日貿易赤字の是正を目指し、日本側に為替政策の変更を強硬に求めることが予想されます。
日銀を通じた通貨安誘導により株価を押し上げてきたアベノミクスが封じられるのは、もはや時間の問題と言えそうです。
(吉池 威)