[フランクフルト 26日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)は26日に公表した半期に1度の金融安定報告で、新型コロナウイルス感染拡大で金融の脆弱性が高まったとし、債務水準の急上昇で銀行が苦境に陥る中、将来的に一段の危機に見舞われる恐れがあると警告した。
ECBは、今年のユーロ圏経済が約10%のマイナス成長に陥ると予想され、各国政府は経済への影響緩和に向け多くの対策を導入してきたとしながらも、長期的な代償は存在しており、一部の国は債務返済に苦しみ、ユーロ圏離脱リスクが高まるとの見方を示した。
その上で、債務水準が高い国はこうした状況に耐えられない恐れがあり、一方で銀行収益の著しい低下と不動産市場の調整リスクの増大なども不安定要因の一部として挙げられるとし、「多くの国で新型ウイルス感染拡大は収束しつつあるものの、経済、および市場が受けた影響で、ユーロ圏の金融安定の既存の脆弱性が明るみに出ると同時に助長された」と指摘した。
ユーロ圏全体の域内総生産(GDP)に対する債務比率は今年、ユーロ圏債務危機時を大幅に上回り、100%を超える恐れがある。同比率はイタリアで160%近辺に達する可能性があり、市場ではすでに同国のユーロ圏離脱の公算が意識され始めている。
ECBは「各国政府、および欧州全体で実施される措置が債務の持続可能性を維持するに十分でなかった場合、市場が認識するリデノミネーションリスクが一段と上昇する恐れがある」とした。
一部ユーロ加盟国では脆弱性が高まっているが、こうした国の国債利回りの上昇は民間部門に波及し、すでに多額の損失に直面している銀行が一段の打撃を受ける恐れがある。真っ先に顕在化するリスクは企業の信用格付けの引き下げで、これにより実体経済の資金調達能力が制限される恐れがある。
ECBは、投資不適格級への格下げは避けられず、年金基金や保険会社などは売却に動かざるを得なくなると予想。高利回り社債の市場は規模が比較的小さいため、売りは国債に向かう恐れがあるとした。
ECBは現時点では投資適格債のみを資産購入の対象としているが、投資不適格債も対象に含めることの是非を検証している。