[サンフランシスコ 12日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)は12日、半期に一度の金融政策報告書を公表し、新型コロナウイルス流行による経済活動への打撃によって家計と企業のバランスシートは「持続的に脆弱」な状況に陥るとの見方を示した。
さらに、最近のデータは「実質米国内総生産(GDP)が第2・四半期に急激に縮小する」可能性を示唆していると指摘した。
新型コロナのパンデミック(世界的大流行)が引き起こした経済的打撃が持続する可能性があり、経済の道筋は極めて不確定とした。さらに、労働市場や生産性を巡る見通しにも不透明感が漂っているとの認識を示した。
パンデミックを巡る今後の状況も極めて不確かで、感染の第2波は著しいリスクと指摘した。
FRBは「3月から続いている経済・金融上の衝撃により家計と企業のバランスシートは圧迫されており、持続的な脆弱性につながる可能性がある」とし、懸念材料として、感染拡大再発の大幅なリスクが存在する中での新型ウイルス制御見通しの不確実性、中小企業を中心とした企業の大量倒産、労働需要の回復を巡る先行き不透明性、賃金に対する下向き圧力、地方・州政府の財政に対する圧力、貿易の阻害を反映した世界的な供給網の再編などを列挙した。
その上で「外出自粛措置により旅行、観光、外食、娯楽などへの支出が著しく抑制されたことで、これまでのリセッション(景気後退)とは異なり、サービス部門が製造業部門より著しく大きく落ち込んだ。ソーシャル・ディスタンシング(社会的距離の確保)措置などがこうした産業分野の回復に対する一段の重しとなる恐れがある」とした。
労働市場については、新型ウイルス感染拡大により「突如として、深刻で広範な」影響を受けたと指摘。雇用喪失は、長期間の無給状態に耐える余力が小さい低賃金労働者に偏っているとの認識を示した。
地方・州政府については、税収の急減を受け「大幅なストレス」にさらされていると言及。全般的な雇用情勢が改善し、新型ウイルス感染拡大に起因する雇用喪失の最悪期は脱した初期の兆候が出始めたにもかかわらず、地方・州政府は5月に入ってからも雇用削減を継続したと指摘した。
このほか、新型ウイルス感染拡大に起因する景気後退から脱却できるまでに多くの中小企業が倒産し、これにより回復ペースが鈍化し、米経済が長期的なダメージを受ける恐れがあると指摘。政府の雇用支援策の期限切れ後に倒産に直面する企業が出てくる可能性があるとし、「新型ウイルス感染拡大による危機からの景気回復は、中小企業が生き延びられるかに左右される」とした。
その上で、雇用喪失は大企業と比べ中小企業の方が深刻化しているとの認識を示し、中小企業の倒産は雇用喪失だけでなく、企業内の知見の喪失や地域社会の変貌のほか、米国の革新性の喪失につながる恐れもあるとした。
パウエルFRB議長は来週16・17日に議会の公聴会で金融政策報告書について証言を行う。
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