[東京 19日 ロイター] - 日銀は19日、4月と5月の金融政策決定会合の議事要旨を同時公表した。新型コロナウイルスの感染拡大による世界的な経済ショックにより、デフレリスクが懸念される一方、金融機関の体力が消耗するなかでさらなる金利低下の副作用を懸念する指摘が出ていたことが明らかになった。政府の経済対策を支えるため国債買い入れを進める姿も明確になっている。
<コロナ契機に成長期待低下の可能性>
4月27日に開かれた会合で日銀は、上限を設けず必要な金額の長期国債買い入れを実施することや企業資金繰り支援拡大など追加緩和を打ち出した。新型コロナウイルスが「経済・物価に強烈な逆風」となっているため、「感染症が早期収束し、収束前後で経済に構造変化起きないという前提が満たされない可能性を考慮する必要がある」(一人の委員)との懸念が出た。
このほか、「パンデミックの再燃懸念から人やモノの移動が回復しないリスク」(何人かの委員)や、「コロナを契機に企業や家計の中長期的な成長期待が低下する可能性」(ある委員)に対して懸念が表明された。「感染症が長引けば、企業の信用力が低下し、銀行の信用コストが増加することで金融仲介機能が低下する可能性」も何人かの委員から指摘された。
<さらなる財政・金融協調十分可能>
このため政策運営を巡って、「2%の物価目標へのモメンタムでなく、金融経済活動下支えを最優先し必要なら政策対応すべき」(一人の委員)との声があった。
多くの委員が政府との連携の重要性を強調。「大きな経済危機は財政・金融政策の緊密な連携・協調が不可欠」(一人の委員)との指摘や、「現在はデフレが懸念される局面で、さらなる財政・金融政策の協調は十分に可能」(一人の委員)との見方、「政府の経済対策と合わせ積極的な国債買い入れによるデフレ圧力抑制が適当」(一人の委員)との意見が出された。
一方、「金融機関のバランスシート毀損が考えられるなか、さらなる金利低下は(これ以上下がると金融引き締め効果をもたらす)リバーサルレートに抵触することが早まる可能性がある」(一人の委員)と副作用を懸念する声もあった。
資金繰り支援策の詳細を決めるため5月22日に開催された臨時会合では、「新型コロナの影響が長引く可能性があり、企業資金繰りをかなり長い期間支援する必要生じる可能性がある」と何人かの委員が表明した。「感染症の長期化で企業資本の毀損や貸し出しの不良債権化リスクにも注意が必要」(何人かの委員)との指摘も出た。
(竹本能文 編集:青山敦子)