[シカゴ 15日 ロイター] - 現在の世界の新型コロナウイルス感染のほぼ全部を、感染力の強いデルタ株が占めている。今のところワクチンはデルタ株による重症化や死亡を防ぐ力を維持しているが、科学者は警戒を緩めていない。
これまでに分かっていることを以下にまとめた。
◎なお主流のデルタ株
2020年12月にインドで最初に見つかったデルタ株は今もなお、新型コロナウイルスの中で最も懸念される変異株だ。世界保健機関(WHO)はデルタ株を「懸念すべき変異株」に指定している。つまり感染力が強大化し、より重症化したり、ワクチンや治療法の効果を弱めたりする可能性があるとされる。サンディエゴのラホヤ免疫研究所のウイルス学者シェーン・クロッティ氏は、デルタ株の「超絶的な力」はその感染力だと解説する。
米疾病対策センター(CDC)の分析では、デルタ株の感染力はそれ以前の変異株の2倍強。各種研究からは、入院の確率もより高そうなことがうかがえる。またデルタ株の潜伏期間は従来株より2-3日短いので、免疫システムを整える時間も少なくなる。
デルタ株感染者の鼻腔内のウイルス量は、従来株の場合のおよそ1200倍にも達する。ワクチン接種後にデルタ株に感染した人のウイルス量も、未接種の感染者と変化がなく、どちらも他人に感染させてしまう。ただワクチン接種者の方がウイルス量の減少スピードが速く、ウイルスを拡散させる期間はより短期となる公算が大きい。
WHOによると、公的なデータベースに報告された全遺伝子配列の99.5%がデルタ株で、ほとんどの国で他の変異株を「圧倒している」という。
重大な例外が南米。ここではデルタ株の感染拡大ペースがより緩やかで、以前にはガンマ株、ラムダ株、ミュー株など他の変異株が世界的な脅威になり得るとみなされ、現在も報告された遺伝子配列においてこれらの変異株が相当な比率となっている。
◎デルタ株の派生型
デルタ株が世界全体で流行の主流となった点から、多くのワクチン専門家は、今後登場する全ての変異株はデルタ株の派生型になると考えている。
デルタ株の「孫世代」として注目される変異株の1つは「AY.4.2」と名付けられており、主に英国で確認され、遺伝子配列の約10%を占める。AY.4.2は、ウイルスが細胞に侵入する際に使う突起部に当たるスパイクたんぱく質の変異が2つ増え、科学者はこうした変異がウイルスにどのような進化をもたらしたのか引き続き研究を進めている。
英保健安全保障局(UKHSA)はAY.4.2を「調査中の変異株」に分類。暫定的な分析結果では、デルタ株と比べてワクチンの効果を著しく低下させないことが示された。もっとも感染力がやや高まった可能性を示す幾つかの証拠もある。
WHOの集計に基づくと、AY.4.2は既に米国を含めて少なくとも42カ国に広がっている。
◎望まれる新世代ワクチン
ウイルス専門家はデルタ株について、ワクチンの免疫保護機能や自然感染で得られた免疫を突破する変異の兆候がないかを注視し続けている。
そうだとしても、現在あるワクチンは重症化や死亡を防げるものの、感染自体を阻止する効果はない。ウイルスは、たとえワクチン接種後であっても鼻腔内で複製され、微少なエアロゾルによって感染が拡大され得る。
従って新型コロナウイルスを根本的に退治するには、感染自体も防ぐ新世代のワクチンが必要になりそうだ、とメイヨ・クリニックのワクチン開発者グレゴリー・ポーランド博士は強調する。ポーランド氏らの専門家の話では、世界はそれまで脆弱さを抱え続けることになる。