[東京 1日 ロイター] - 日銀の安達誠司審議委員は1日、大分県金融経済懇談会であいさつし、新型コロナウイルス感染症の動向について、ごく足元で新たな変異株による感染拡大への懸念が高まっており、状況を注意深くみる必要があると述べた。来年3月に期限を迎えるコロナオペの扱いについては、感染症の動向や企業金融面への影響を点検しながら検討していくとした。
政府は30日、国内で初めてコロナの新たな変異株「オミクロン株」の感染者を確認したと発表した。安達委員は、日本ではコロナの新規感染者数が大幅に減少していると指摘しつつも、今後のオミクロン株の動向に懸念を示した。
国内経済の動向については、ワクチン接種の進展などで対面型サービスの営業が再開され、これらの業況は持ち直しつつあると述べた。ただ、感染症の動向は引き続き不確実性が高い状況で、サービス消費がすぐにコロナ禍前の水準に戻ると考えるのは「楽観的だ」と語った。
経済の足かせとなっている供給制約は一時的との見方を維持したものの、解消の見通しは感染症の動向次第であり、「不確実性が大きくなっている印象を受ける」という。
国内の物価の先行きについて、従来、インフレ率はゼロ%近辺で推移するのではないかとみていたものの、企業の価格設定行動の変化やエネルギー価格が高止まりする可能性などを考慮すると、「物価上昇率が高まっていく可能性が高まった」と述べた。
このところの為替の円安の動きについては、スタグフレーションにつながるような「悪い円安」の状態にあるとは考えていないと語った。むしろ、日本企業の海外子会社の収益の増加や輸出企業の収益への寄与などプラスをもたらしている面があるとの見方を示した。
コロナオペの来年4月以降の扱いは、感染症の動向や企業金融面への影響を点検しながら検討していくとした。金融システムの観点から、コロナ禍で累積した企業債務が、将来不良債権となって金融システムのリスクとして顕在化しないかという視点も意識する必要があると指摘した。