[メルボルン 5日 ロイター] - シドニーを拠点とする外交政策シンクタンク、ローウィー研究所は5日公表した報告書で、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)によりインド太平洋地域における中国の影響力が弱まったと指摘、同地域で深まりつつある安全保障面の不確実性は「重大な」戦争リスクを浮き彫りにしていると警告した。
同研究所はインド太平洋地域の米同盟国とインドなど主要大国について、中国の台頭に対抗する軍事的、戦略的な勢力を維持する米国の能力と意思に、かつてないほど依存していると説明した。
一方で中国は、ロシア、パキスタン、北朝鮮との軍事交流を強化しつつ、東南アジア諸国に米国との同盟に加わらないよう働き掛けている。
報告書は「新たに出現した軍事力の均衡がインド太平洋における抑止力と戦略的安定に寄与するかどうかは、未解決の問題だ」と指摘。「敵対心の深さ、米中間の競争の広がり、多数の火種の存在は、戦争リスクが重大であることを意味している」と強調した。
ただ、コロナ禍の影響でインド太平洋地域の全体的な繁栄は損なわれ、中国の包括的な影響力は弱まった。
報告書は「中国が今、2030年までに包括的影響力において米国を上回る可能性は低下した」と分析。「中国がかつての米国ほどの支配力を持つことはないだろう」とした。