[ジュネーブ 10日 ロイター] - 国際看護師協会(ICN)のハワード・キャットン最高経営責任者(CEO)は10日の記者会見で、コロナ禍で多くの看護職が精根尽き果てており、1年以内に離職する意向のある率が20─30%と2倍に増えていると警告した。
キャットン氏は「今が重大な転換点にある。こうした傾向が続けば看護師の大量離職が起きる可能性がある」と指摘。各国政府が来年、自国の看護師や医療従事者に必要な投資をし、生活支援を考えなければならないと呼び掛けた。
同氏によると、世界保健機関(WHO)の統計ではコロナ禍が始まってから今年5月までに少なくとも11万5000人の看護師がコロナで死亡しているが、実態はこの2倍とみられる。コロナ禍前に既に世界では600万人の看護師が不足していた上に、今後数年で引退予定の看護師も約475万人いるという。
富裕国と貧困国を比べると、人口比でみた看護師の数は10倍近い開きがあるにもかかわらず、多くの国はさらに外国から病院のスタッフを雇っていると指摘。伝統的にはフィリピンやインドが看護師の供給国だが、ケニアやウガンダ、ナイジェリアといったアフリカ諸国からの動きが増えているとした。雇い入れが目立つのは欧州では英国とドイツ、北米では米国とカナダとした。
キャットン氏はさらに、ようやくコロナ禍のトンネルの先の光が見えてきたと思っていた看護師たちが、オミクロン変異株を巡る懸念によってまた苦境に引き戻されるとの強い不安感にさいなまれているとも訴えた。