[フランクフルト 16日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)は16日の理事会で、新型コロナウイルス対応の緊急支援策は終了するが資産買い入れは継続し、来年の景気を支援する方針を示した。
ラガルド総裁は記者会見で「新型コロナウイルスの新変異株の拡散が不確実性をもたらしている」と指摘。新たな制限措置が必要になれば接客業などに影響が及ぶと述べた。
また、20年のロックダウン(都市封鎖)が解除され、需要が軌道に乗った際に生じた世界的なサプライチェーン(供給網)の障害がすでに回復を妨げているとした上で、「これらのボトルネックは当面続くだろうが、22年には幾分緩和されるはずだ」と語った。
ECBはインフレ見通しを引き上げる一方、22年の成長率見通しを引き下げた。インフレ率に関しては今年と来年は目標の2%を上回るものの、23─24年には目標を下回るとした。
1兆8500億ユーロのパンデミック緊急購入プログラム(PEPP)は第1・四半期に減額し、3月で終了すると決定した。ただ、満期を迎えた債券の償還金を再投資する期間を延長したほか、何かしらのショックが生じた際にはPEPPを即時に再開する用意があるとした。
また、従来の資産購入プログラム(APP)についてはPEPP終了の影響を緩和するために一時的に月額購入額を増やす。来年第2・四半期に月間400億ユーロに倍増させるほか、第3・四半期は300億ユーロとする見通し。10月以降は200億ユーロで必要な限り続けるとした。
理事会は「景気回復と中期インフレ目標に向けた進展により、今後数四半期で資産買い入れペースを段階的に縮小することが可能と判断した」と表明。ラガルド総裁は「金融政策を実施する上で柔軟性と選択性を維持する必要がある」とした。
今回の決定を巡っては「非常に大多数」の賛同が得られたが、ワイトマン・ドイツ連邦銀行(中央銀行)総裁、ホルツマン・オーストリア中銀総裁、ウンシュ・ベルギー中銀総裁が反対した。関係者によると、保守的な3総裁は再投資を確約した期間が長すぎるとし、インフレ率が目標を上回る恐れがあるにもかかわらず、ECBを将来にわたり拘束することになると主張したという。
また、3総裁は23、24年のインフレ率がECB予想の1.8%よりも高くなる可能性を強調した。ウンシュ総裁は16日の理事会で議決権を持っていなかった。
<ハト派色弱まる>
アナリストは今回のECB理事会では全体的にハト派色が弱まったと指摘。ユーロは0.35%高の1.13350ドルとなった。ただ、終盤はほぼ横ばいとなった。
INGのエコノミスト、カーステン・ブルゼスキ氏は「APPの月額購入額の増額を一時的にとどめたのは明らかにタカ派の勝利である一方、APPの無期限継続はハト派の勝利とみなすべきだ」と述べた。
ラボバンクのFX戦略部門責任者、ジェーン・フォーリー氏は「PEPPの再投資と再開の可能性に関する声明にハト派的な要素があるものの、今後のAPPの月間購入額が比較的抑えられたことがサプライズだった」と述べた。
ECBは、PEPP下で購入した債券の満期償還金は24年末まで再投資されるとし、従来計画より1年延長した。償還金はストレス下にある市場を支援するために柔軟に使用されるという。
特にギリシャでの債券購入を中断した場合、ギリシャ経済への金融政策の伝達が損なわれる可能性があり、それを避けるためにPEPPの再投資ではギリシャ債を償還分以上に購入する可能性があるとした。
ギリシャ債は信用格付けが低いため、APPでは買い入れ対象外となっている。
ラガルド総裁は「ギリシャは格付けを改善させたが、APPで買い入れ対象となる格付けを取得していない。このためギリシャについて特有の言及を行うことを決定した。これは本当に強いシグナルであり、ある国に関して固有の条項を設けることは珍しい。この特別な条項は理事会で非常に力強く支持された」と述べた。
ECBは政策金利を据え置いたほか、金利と資産買い入れに関するフォワードガイダンスも維持した。フォワードガイダンスに関しては一部で調整すると見込まれていた。
<^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
UPDATE 4-ECB dials back stimulus in tense meeting
ECB cuts stimulus but promises copious support
ECB hawks disagreed with bond largesse, inflation outlook
CORRECTED (OFFICIAL)-ECB's Greek reference a strong signal of support, Lagarde says
ECB、インフレ見通し上方修正 来年の成長率予想は引き下げ
UPDATE 2-ECB理事会後のラガルド総裁発言要旨
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^>