[東京 22日 ロイター] - 日銀が22日に公表した議事要旨によると、10月27─28日に開いた金融政策決定会合では、新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラムについて、終了する場合はマイナスのショックを生じさせないよう慎重に行う必要があるとの意見が出ていた。国際商品市況の上昇や為替に関する議論も行われ、円安の影響については実体経済や金融市場を通じたさまざまな波及経路を考慮する必要があるとの指摘も出ていた。
日銀は12月開催の決定会合で、コロナ特別プログラムについて制度を修正した上で一部を半年間延長することを決めた。これに先立つ10月会合では、1人の委員が、昨年大きく増加した予備的な資金需要は落ち着き、感染症の資金繰りへの影響は売り上げの低迷が続く業種や中小企業に限定されつつあるとの見方を示した。
一方、ある委員から、政策支援の継続を考える際には、低収益性企業の退出が抑制され低賃金・低価格構造が温存されるデメリットに注意が必要との指摘があったほか、1人の委員から、特別プログラムの社債等の買い入れについて、大企業の資金繰りが改善する中で市場機能や年金・生保等の運用に与える影響にも配慮する必要があるとの指摘が出ていた。
<来年前半には景気改善が明確になるとの見解>
同会合で決めた「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」の議論では、日本経済は当面、感染症によるサービス消費への影響が残るほか、輸出・生産が供給制約によって一時的に減速すると委員の見方が一致した。一方、1人の委員が「感染症への警戒感と供給制約の影響が和らぐ来年前半には、景気の改善が明確となる」と見解を示した。
消費者物価の前年比は、当面、エネルギー価格の上昇を反映してプラス幅を緩やかに拡大していくとの見方で一致した。
ある委員は、輸入原材料の価格上昇を転嫁する動きが消費者物価を押し上げているものの、日本における賃金上昇や供給制約に起因する物価上昇圧力は「弱い」と指摘。委員1人は、消費者物価の前年比はプラスに転じたが、需給ギャップや予想インフレ率の動向を踏まえると予期できる将来において「物価安定の目標」の達成は難しいと述べた。
<物価目標未達での緩和修正理由「全くない」>
10月会合開催時の外為市場では円安が進行し、ドル/円は一時114円半ばまで上昇していた。何人かの委員は、円安の影響について、輸出を押し上げる効果は従来よりも低下しているが、海外収益の増加や株高を通じて「日本経済全体に対してはプラスに作用している」との見解を示した。
ある委員は、円安などに起因する物価上昇がみられるものの、現状ではインフレ圧力の強まりが日本全体の経済厚生を低下させる可能性は低く「強力な金融緩和を維持すべき」と述べた。
金融政策運営について、ある委員は、日本における金融政策の正常化とは、他国の政策動向にかかわらず2%の物価安定目標を安定的に達成することであり、目標に達していない中では金融緩和を修正する理由は全くないとの見解を示した。
(杉山健太郎 編集:田中志保)