[シカゴ 30日 ロイター] - 新型コロナウイルスの急激な感染拡大は一部の国で既にピークアウトしたものの、なお収束には程遠い。そして、現在の世界における感染のほぼ全ては、強力な感染力を持つオミクロン株が占めている。ただ、科学者が今警戒しつつあるのは、このオミクロン従来株「BA.1」の派生株の1つである「BA.2」が、欧州やアジアの一部で「BA.1」から置き換わる形で勢いを増している事態だ。「BA.2」についてこれまでに分かっていることを以下にまとめた。
◎「ステルスオミクロン」
世界的な科学イニシアティブであるインフルエンザウイルス遺伝子データベース(GISAID)に今月25日時点で登録されたゲノム解析データに基づくと、世界の新型コロナウイルス感染の98.8%は「BA.1」だ。だが、世界保健機関(WHO)によると、「BA.2」の感染報告も最近増加している。
WHOは「BA.1」と「BA.2」のほか、さらに2種類のオミクロン派生株「「BA.1.1.529」、「「BA.3」もリストアップ。いずれも遺伝子的には近似しているが、それぞれ微妙に変異した特徴によって働きが違ってくる可能性もある。
フレッド・ハッチンソンがん研究センターで計算科学を用いたウイルス研究をしているトレバー・ベッドフォード氏は28日、GISAIDの情報とオックスフォード大学が運営するデータベース「アワー・ワールド・イン・データ」を踏まえると、「BA.2」はデンマークにおける感染の約82%、英国の9%、米国の8%を占めている、とツイッターに投稿した。
「BA.1」はそれ以前の変異株に比べて検知が幾分簡単だった。「BA.1」は一般的なPCR検査で利用される3つの「標的遺伝子」の1つが欠失しているからで、この特徴を持つウイルスが検出された場合、自動的に「BA.1」だと推定されてきた。
一方で、時に「ステルスオミクロン」と呼ばれる「BA.2」は、「BA.1」のような標的遺伝子の欠失が見当たらない。そのため科学者らは、デルタ株を含めた以前の変異株と同じやり方、つまりGISAIDなどの公的なデータベースに登録されたゲノムの数を追いかけることで動向を注視している。
専門家の話では、「BA.2」は他の変異株と同様に家庭用の検査キットでも検知はできるが、どの変異株が症状を引き起こしているかは分からない。
◎感染力は強まったか
「BA.2」は感染力が、既に非常に強い「BA.1」をさらに上回る可能性が報告され始めている。もっとも今のところ、ワクチンの防護機能をすり抜ける力が強まったという証拠は出てきていない。
デンマークの保健当局は、暫定的なデータに基づいて「BA.2」の感染力は「BA.1」の1.5倍に達する半面、重症化リスクを高めそうにはないと推定している。
英保健安全保障庁が昨年12月27日から今月11日までイングランドで行った接触追跡調査の結果からは、「BA.2」の家庭内感染比率は13.4%と、他のオミクロン株の10.3%より高いことも判明した。同庁の28日付リポートによると、ワクチン効果に差はなかったもようだ。
ノースウェスタン大学ファインバーグ・スクール・オブ・メディシンの感染症専門家、エゴン・オゼル氏は、そこで「BA.1」感染者が「BA.2」には感染しないのかという重大な疑問が浮上してくると話す。
オゼル氏は、デンマークでは「BA.1」感染が深刻だった幾つかの地域で「BA.2」感染が増えているとの報告が寄せられており、この問題に関心が集まっていると指摘。「BA.1」感染者が「BA.2」の感染を防げないのであれば、感染の波はピークが2つできる恐れがあると懸念しつつ、「何が起きるかを把握するのは時期尚早だ」と付け加えた。
それでも同氏は、これまでのワクチン接種と追加接種によって引き続き入院と死亡のリスクが抑え込まれているのは、良い材料だとの見方を示した。