[ソウル 8日 ロイター] - 北朝鮮は6─7日に最高人民会議(国会に相当)を開催し、制裁や新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)の影響で昨年に経験した「困難で複雑な問題」にもかかわらず、経済を発展させて人民の生活を改善すると表明した。国営の朝鮮中央通信(KCNA)が8日に報じた。
KCNAによると、会議では内閣の活動や国家予算、保育や海外居住者の保護に関する新法の承認が議題となった。金正恩・朝鮮労働党総書記は欠席し、崔竜海・最高人民会議常任委員長が会議を主導した。
北朝鮮は兵器開発を巡る制裁や、新型コロナに伴う封鎖で中国との貿易が落ち込んだことで、経済が大きな打撃を受けている。
KCNAによると、内閣で経済分野を指揮する金徳訓首相は会議で、経済5カ年計画の基盤固めを目指すとし、金属・化学品産業が重要な関連分野になると述べた。
また「経済建設分野は昨年、敵対勢力の制裁継続や世界的な健康危機のため予想以上に困難で複雑な問題に直面した」と指摘。
その上で「われわれは今、5カ年計画の実行に向けた確かな保証を敷き、経済発展と人民の生活水準向上で明らかな変化を起こすという、大がかりだが責任ある仕事に直面している」と述べた。
「一元的貿易制度」の回復に向けた取り組みを強化する方針を示したが、詳細は明らかにしなかった。
韓国慶南大学の北朝鮮研究を専門とするLim Eul-chul教授は、人民議会が先週承認した貿易法の改正に沿った貿易チャネルの中央への一元化と国家管理の強化を意味している可能性があると分析した。
金首相は人民への食料配給を「正常化」するため穀物生産を拡大する考えも示し、肉、卵、果物、野菜、キノコ、乳製品、油の原料となる作物を「国民の食生活に大きく貢献する」必須品目に挙げた。
北朝鮮は新型コロナ感染者を公的には確認していないが、国境を封鎖したほか、厳格な行動制限などを導入している。
北朝鮮の通商全体の約90%を占める中国との貿易は2020年、国境封鎖を受けて80%減少した。両国の通商は先月再開された。
KCNAによると、コ・ジョンボム財政相は会議で、今年の予算を説明。「パンデミック対応」と「緊急感染症予防措置」向けの支出を昨年から33.3%増やすことなどを盛り込んだ。
予算規模については明らかにしなかったが、総額の15.9%は国防に振り向けるとし、昨年とほぼ同水準となった。
韓国統一省の高官は記者団に「パンデミックのため昨年から防衛予算の策定が続いているようだ」と話した。
対外政策や南北関係への言及はなかった。昨年9月の会議では金総書記が米国の「敵視政策」を批判、韓国とのホットライン再開を提案した。