[22日 ロイター] - 人民元が22日、対ドルで9カ月ぶり安値を付けた。週間では2015年の切り下げ以降で最大の下げとなる見込みで、中国当局が景気急減速に歯止めを掛けるため元安を容認しているとの憶測も出ている。
米連邦準備理事会(FRB)のタカ派傾斜で米中金利差は7月以来の水準に縮小。上海などで新型コロナウイルス感染対策として都市封鎖が実施されていることも経済の不安材料として元を圧迫している。
オンショア元は22日、心理的節目の1ドル=6.4元を抜けると下げが加速、通常取引を6.4875元で終了した後、夜間取引で6.50元台を付けた。週間では2%下落と元切り下げがあった2015年8月以来の大幅な下げを記録。4月に入って2.5%下落している。
オフショア元は1年ぶり安値の6.5482元を付けた。週間では同じく15年8月以来の大幅下落となる見込み。
ロイヤル・バンク・オブ・カナダ(RBC)のアジアFXストラテジスト、アルビン・タン氏は「上海をはじめとする新型コロナウイルス対策のロックダウン(都市封鎖)や大半の地域の活動停滞で、中国と人民元のマクロ見通しは過去数週間で大きくシフトした」と指摘した。
しかしトレーダーは、元安はロックダウンで打撃を受けている輸出業者への圧力を緩和するとみられ、歓迎する向きもいると指摘する。
今のところ国有銀行の元買いはみられず、当局はある程度の元安を容認しているもようだ。
取引開始前に中国人民銀行(中央銀行)が発表した元の対ドル基準値(中間値)は6.4596元で6カ月ぶりの安値。ただロイターがまとめた市場予想(6.4641元)よりは元高だった。
主要貿易相手の通貨に対する人民元の動向を示す貿易加重指数は2カ月ぶりの安値となる104.25を付けた。中国は対外貿易で不利な立場にならないため、同指数を一定の範囲に維持しようとしている。
中国国家外為管理局(SAFE)は22日、米連邦準備理事会(FRB)の政策変更に中国は対処可能で、海外の不確実性が通貨人民元に及ぼす影響は小さいとの見方を示した。
また中国の外貨預金は3月末時点で1兆0500億ドルと過去最高水準にある。
それでも今週の急激な動きを受け、大手投資銀行などは元相場予想の引き下げに動いている。
UBSグローバル・ウエルスマネジメントは、国内のコロナ感染拡大や景気への逆風、FRBのタカ派姿勢を踏まえ、6月末の元相場予測を従来の6.40元から6.55元に元安方向へ変更。
JPモルガンは22年第2・四半期および第3・四半期のドル/元目標を6.35元から6.50元に、1年の目標は6.55元から6.60元に修正した。